障害者雇用とは?一般雇用との違いやメリット・デメリットを徹底解説

 
発達障害や精神障害に関する話題がメディアやSNSで上がり、徐々に注目度を増している障害者雇用。企業における義務である法定雇用率も年々上がってきています。しかし、障害者雇用の制度は難しい部分も多く、当事者でも理解が曖昧な部分があります。
本記事では障害者雇用制度の概要や制度を利用し働く上でのメリット・デメリット、実際の待遇条件や配慮まで、就活に役立つ情報を徹底解説します!
 

障害者雇用とは?

ある一定の規模を超えた企業に求められる障害者を雇用する義務です。規模は従業員の数により算定され、現在は43.5人以上を雇用している事業者は障害者雇用の義務があります。(0.5になっているのは20~30時間の勤務時間の人は0.5人カウントのため)
障害者の種類は身体障害者、知的障害者、精神障害者などがあり、算定の基準は手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保険福祉)を持っているかどうかが基準になります。
また、雇用率の水準は上昇傾向で、現在(令和5年時点)では2.3%ですが、令和6年では2.5%、令和8年からは2.7%と段階的に引き上げることが既に厚労省の方針で決定されています。
【参考(外部リンク)】事業主の方へ | 厚生労働省
 

法定雇用率の推移

法定雇用率の推移
雇用率が上昇している背景には、2018年4月から精神障害者も雇用義務の対象に加わったことがあります。
それまではカウントされていなかった精神障害者の人たちが雇用義務に算定されるようになり、より広い範囲の人が対象になったため算定率も上昇してきました。
また、障害者雇用の実施を促す目的で、障害者雇用率の達成・未達成により褒賞やペナルティが企業に与えられています。
基準よりも多くの人を雇用すれば月額あたり 27,000円/人 が支給され、不足の場合は50,000円/人がペナルティとして徴収されます。(100名以上雇用する企業の場合:詳細は下記(*1)を参照)
さらに、雇用状況に改善が全くみられない企業は企業名が公表され社会的なイメージに影響が出ます。
(*1)【参考(外部リンク)】事業主の方へ | 厚生労働省
 
企業名を公表された場合、実際に何か事業への悪影響が出るわけでは有りませんが、企業イメージは大幅に落ち、勤務している社員やその後の取引、採用面などで影響が及ぶでしょう。
このような取り組みを厚生労働省がリードし行うことで、障害のある人たちも就職できるように社会の仕組みが整えられています。
 

障害者雇用と一般雇用の違い

前項でも触れましたが、一般的に障害者手帳を持つ人が就職することを障害者雇用といいます。一般雇用との違いはこの「手帳を持っているかどうか」が制度的には大きなポイントになります。
手帳は以下の3種類となります。
1.身体障害者手帳
2.療育手帳(主に知的障害の人の手帳です)
3.精神障害者保健福祉手帳(発達障害や統合失調症などはここにあてはまります)
このどれかを所持している人が企業での就職をした場合に障害者雇用となります。
身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳
障害者雇用の場合はその人の障害にあった合理的配慮が得られます。合理的配慮の具体例としては以下があります。

◇ 合理的配慮の具体例

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視覚に障害がある人が自分のデスクにいくのに苦労をしないように道にある物や荷物などを極力少なくし、手すりなども設置した。(サービス業/視覚障害者)
 
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サーバーの音やパソコンの音がすると体調を崩してしまう人がいるため、リモートワークを導入。また、出社をするときにはヘッドフォンの装着を認めた。(IT業界/聴覚過敏)
 
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予想外のことや不測のことが起きた際にはパニック状態に陥ってしまうため、それが内容に仕事の切り出しを工夫し落ちつして仕事が出来るようにしてもらった。(福祉業界/発達障害)
 
他にも様々な例があり、一人一人の障害に合わせて多種多様に配慮されています。
このように、障害者雇用の場合はその人の特性にあった働き方を企業側と本人で話し合いながら進めていくことができます。
しかしながら、実際には障害者手帳を持ちながらも一般雇用で働く人も多く存在し、一般的にそのような就労形態はクローズ就労と呼ばれています。(逆に、手帳を持っていることを公表し働くことをオープン就労といいます。オープン就労には障害者雇用で働いている場合と、一般雇用で働きながらも障害を明かしているケースもあります。)
クローズ就労が選ばれている理由として、障害者雇用を選んだ場合にはその後のキャリアが制限され、待遇や昇進に影響が出ることもあります。
法律上はそのようなことが無いように規定されていますが、現実としては少なからず影響が出る場合があります。そのため、クローズ就労を選択している人が多くいるのも現状です。
 

障害者雇用で働くメリット・デメリット

◇ 障害者雇用で働くメリット

働く人として最も大きなメリットとしては、やはり合理的配慮が得られることです。
自分の障害をオープンにしながらそれに対応する配慮を得て働くことができれば、働きやすさは大幅に向上します。
身体障害など外から見てわかりやすい障害はもちろんのこと、精神的な障害については周りの人が「この人にはこのような障害があるんだな」と事前に把握するだけで対応が大きく変わります。
また、障害者雇用の場合は一般雇用と比べて倍率が低いことが多く、大手企業のオープン職に就職できる可能性も高くなります。一般雇用では10倍以上の高倍率の企業に、障害者雇用では2~3倍の倍率で応募できる例などもあります。

◇ 障害者雇用で働くデメリット

一方で、障害者雇用で働く上でデメリットがあります。
障害者雇用は多くの場合、障害年金と併用されることが視野に入れられているため、給料水準が低い場合があり、都市部では障害者雇用の給料だけでは生活が苦しいという意見も多く耳にします。こちらは後ほどお出しする『障害者雇用における平均賃金と雇用形態』図(*2)にも記載されていますが、障害の種別によっては平均賃金が10万円~15万円ほどになっていることからも分かります。
法定雇用率の上昇によって求人数自体は増えていますが、まだまだ職種の幅が狭く、マーケティングや人事などの人気職の求人が少ない傾向です。
都市部と地方での求人数の差もあり、なかなか地方部では求人自体が少ない傾向があります。一般雇用とは別のキャリア形成となり、管理職などのキャリアアップにつながらない場合もあります。
 

障害者雇用の上手な活用方法

前項にてメリット、デメリットを共に紹介しましたが、中には障害者雇用を上手に活用して安定した大手企業に就職する人なども多くいます。一定の規模以上の企業は障害者を雇用する義務の人数も多くなりますので、様々な形で法定雇用率を達成している企業もあります。
その場合、大手企業にも関わらずあまり求人倍率が高くない状態で応募ができるので、一般雇用と比較すると競争率が高くない選考になります。現在ではダイバーシティ経営にも意欲的な企業は増えており、職種を最初から区切らないオープン雇用などが取り入れられるなど一般雇用の人と変わらない形でその後のキャリアを切り拓いていける例もあります。
 

障害者雇用の課題

障害者雇用には職種の幅や都市部と地方の格差などの他にも様々な課題があります。法定雇用率を達成されない企業の場合は罰金や企業名公表などのペナルティもあるため、企業はなんとか法定雇用率を達成する側面もあります。そのため、特例子会社などを作ったはいいものの、スキルアップなどを見込めない業務を中心に仕事とされていることもあります。
場合によっては数合わせとして考えられてしまい、挨拶をするだけで仕事が終わってしまうようなこともあります。また、仕事があったとしてもやる意味が感じられない繰り返し業務を永遠と仕事として割り振られてしまう場合もあります。(例えば、丸いスコップで広い畑を永遠と耕す作業などです。)
また、身体、知的、精神での平均賃金や雇用形態にも差が大きくあります。
2018年の調査では賃金と雇用形態は以下の通りとなっており、障害の種別によって大きな差があることが分かります。

障害者雇用における平均賃金と雇用形態

障害者雇用における平均賃金と雇用形態
身体障害の人は安定した雇用や賃金が高い企業に就職しているのに対し、他の障害がある人たちは比較するとそうではないことが分かります。このような点も障害者雇用における課題と言えるでしょう。
 
 

障害者雇用で就職するのに利用できる機関・制度

障害者雇用を目指す上での支援機関は以下のようなものがあります。

◇ 相談や支援機関

・ハローワーク
・地域障害者職業センター
・在宅就業支援団体
・発達障害者支援センター
・難病相談支援センター など

◇ 就労に向けた支援策

・障害者別の支援策
・チーム支援
・障害者トライアル雇用事業 など
様々なものをひとまずは相談をしてみて、自分に合うものを利用しながら就職まで結びつける人が多いようです。※これらは全て厚生労働省のHPで詳細を確認いただけます。
【参考(外部リンク)】障害者の方への施策 | 厚生労働省
 
 

障害者雇用での新卒入社を目指す人は家でも就活オンラインを活用しよう

◇ 家でも就活オンラインとは?

「家でも就活オンライン」は、全国の障害学生1000名以上が活用する障害学生のための就活・就職・求人サイトです。障害者雇用に関する就活のイベントや、お役立ち情報の発信、個別相談や求人紹介などを行っています。学生の皆様は無料でお使いいただけます。
<こんな学生におすすめ>
・障害学生の就活の情報が少なく困っている
・一人で頑張っているけど、自分のやり方でいいのか不安
・就活に向けて何から始めたらいいかわからない
・自分に合った企業や仕事がわからない

◇ 家でも就活オンラインでできること

◼ 内定者、先輩社員、人事担当に会える/障害者雇用を知る『就活イベント』

オンライン就活イベントを開催。障害者雇用では必ず知っておきたい情報の提供イベントや疑似インターン企画、内定者、先輩社員、企業の人事担当との交流イベントなど、障害学生の皆様の就活に役立つ様々な機会をご提供します。

◼ 障害者雇用を知る『就活お役立ち情報』

障害者雇用の生の情報や、先輩の就活体験談を動画化。手軽に、必要な情報が手に入ります。
また、障害者雇用の仕事を体感したい方向けに、オンラインで障害者雇用の仕事を疑似体験できるコンテンツもご用意しています。障害者雇用を知って、就活を有利に進めましょう。

◼ 求人に応募する『個別相談&求人紹介』

新卒障害学生を積極的に採用している企業のオンライン説明会を開催し、求人紹介を行っています。
説明会では、企業がどのような思いやビジョンで障害者雇用に取り組んでいるかをじっくり知ることができます。また求人紹介では、あなたに合った企業を一緒に考えます。
 
 
🖊 この記事を書いた人・監修
記事を書いた人
銀河
上智大学卒。ASD(自閉症スペクトラム障害)とADHD(注意欠陥多動性障害)の当事者。ASD優位で空気を読むことが大の苦手。新卒で営業としてキャリアをスタートするも、約1年でうつ病を発症。復職し、発達障害であることの強みを活かして営業成績2位をおさめる。入社満3年を迎えるとともに退社し、会社の同期が設立したCare Earth(株)に誘われ参画。現在はCare Earthの仕事と同時並行しライターやプログラミング、コミュニティ運営を行う。
 
<著書>