障害者手帳の取得のメリットや申請・更新方法を当事者が解説!

 
近年、障害者雇用率が引き上げられたことや、SDGsが広がったことにより持続可能な働き方が注目を集めています。業務委託やフリーランス、人材派遣などそれぞれの個人に合った働き方が注目される中で、障害者雇用での働き方も注目を集めています。しかしながら、障害者雇用に必要となる障害者手帳の申請方法は難しい部分が多くあり、申請を初めて行う方は戸惑うことが多いでしょう。
本記事では、障害者雇用に必要な障害者手帳の申請方法と更新方法、メリット・デメリットなどを当事者目線で解説していきます。
 

障害者手帳とは?

まず、障害者手帳の制度についての解説です。
障害者手帳は以下の3種類に分類され、抱えている障害により申請する手帳も異なります。それぞれの代表的な障害は以下の通りです。

◇ 身体障害者手帳

・視覚障害
・聴覚または平衡機能の障害
・音声機能、言語機能またはそしゃく機能の障害
・肢体(したい)不自由
・内部障害(心臓機能障害や腎臓機能障害など)

◇ 精神障害者保健福祉手帳

・統合失調症
・うつ病、そううつ病などの気分障害
・てんかん
・薬物依存症
・高次脳機能障害
・発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害等)
・そのほかの精神疾患(ストレス関連障害等)

◇ 療育手帳

・知的障害であると判定された人(児童相談所または知的障害者更生相談所にて判断)
身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳
 

障害者手帳の等級

障害者手帳の等級については様々なものがあります。
身体障害者手帳の中にも1級、2級、3級となるものもありますが、1級、3級、4級などと変則的になる場合もあります。精神障害者手帳は基本的に1級、2級、3級ですが、医師の診断書によりどの程度の等級になるかも変わります。
そのため、等級については自分の障害にあったものを医師と相談し、しっかりと決めていく必要があります。
 

障害者手帳の申請方法・更新方法

障害者手帳の申請方法は医師の診断書をもとに市区町村の窓口に提出します。必要な書類は各市区町村のページに掲載されていますが、記載事項が抜けていたり、診断書を書いてもらう際にもポイントを外してしまうと等級が合わないもので判定されてしまうこともあります。
ここでは、必要な書類や手続きなどについて解説していきます。

◇ 申請に必要な書類
(身体・精神で基本的には同じ書類が必要です。)

・診断書
・本人確認のできる書類(住民基本台帳カード、パスポート、個人番号カードなど)
・縦4cm、横3cmの写真
※「精神障害者保健福祉手帳」の場合はマイナンバーカードかナンバーの通知書
-代理人による申請を行う場合の追加書類-
・代理権の確認書類:委任状や申請者本人の保険証など
・代理人の身元確認書類:マイナンバーカードや運転免許証など
申請後に結果が出るまでは身体障害者手帳で1ヶ月ほど、精神障害福祉手帳で2ヶ月ほどがかかります。(東京都の場合は申請者が多いようで3ヶ月ほどかかります。)
15歳以上の人は基本的に本人が市区町村の窓口にて申請をしますが、15歳未満の人は保護者が申請します。
また、療育手帳の申請は各市区町村の「障害福祉担当窓口」で申し込み、知的障害判定を受ける予約だけになります。予約日に実際に知的障害判定を受け、書類などを揃えて面接を行った上で申請する流れになります。
基本的には必要な書類を集めて申請というシンプルな流れですが、診断書を書いてもらう際には医師との連携が重要です。特に精神系統の障害の場合では、医師が感じる障害の重さと当事者本人が感じる重さや症状などは異なる場合があります。
等級に対して厳しい目線を持つ医師もいますが、患者の意思を尊重する医師もいます。その点に注意しながら申請を進めていきましょう。
また、障害者手帳の更新を行う場合には主治医に更新用の診断書を発行してもらう必要があります。
期限の3ヶ月ほど前になると通知が各自治体から届きますので、その内容にしたがって主治医に診断書を書いてもらうことで更新を行うことができます。更新の方法は最初の申請より簡単ですので、一度この流れを経験したら比較的に難なくできるでしょう。
 

障害者手帳を取得するメリットとデメリット

◇ メリット

障害者手帳を提示することで以下のようなメリットがあります。
・障害者雇用枠での就労が可能になる
・医療費の負担減
・税金の控除
・割引等のサービス(代表的なものは電車・バスや映画の割引など)
・手帳を持っていても他人が知ることはない(会社の事務スタッフなども)
障害者手帳を持つ人同士で話題になる一つが電車やバスの割引です。
大阪市内であれば地下鉄が半額になったり、都営地下鉄は障害者手帳があれば無料で乗車できます。(手帳とは別の申請が必要。)
また、意外とメリットが大きいのが各種の割引サービスです。
映画は通常1,800円~1,900円ほどで上映されているものが多いですが、障害者手帳があれば1,000円で鑑賞できます。通常の映画はもちろんのこと、4DXやIMAXなどといった迫力のあるものでも割引が利きます。(1,000円にはなりませんが安くなります)
ディズニーランドやUSJ(ユニバーサルスタジオジャパン)などの娯楽施設でも割引が適用され、USJではチケットが半額になります。この割引額が意外と大きい上に、映画や娯楽施設は基本的に同行者1名にも割引が適用されますので、友人などといく場合にも最適です。(同行者は介添人というカウントをされます。)

◇ デメリット

デメリットとして多くの人から聞くのが、心理的な抵抗です。
自分が障害者という判定を公的にされることに対して、認めたくないという思いがある方も多く見受けられます。
また、障害者雇用枠で働く場合には一般雇用よりも待遇や昇進の面で低いなどのデメリットもあったり、身体障害者手帳の場合は1度の申請をすれば継続的に認定をされますが、精神障害福祉手帳の場合には2年に1度の更新も必要になるため、その手続きが手間になることもデメリットの1つと言えます。
また、デメリットとして「手帳を持つことで自分の障害が他の人に知られるのではないか」と思う方もいますが、それには誤解があります。
会社員の方で年末調整を行っている場合には障害者控除が適用されるために、会社の管理部門の人は事務部門の人が何かしらの障害をもつことを知ることにはなるかもしれませんが、内容まで分かることがなく、それらの情報を他の人に漏らすこともプライバシーの侵害となり固く禁止されています。ですので、他の人や会社の人にバレてしまうという心配もありません。
 

障害者手帳で受けられる福祉サービス

上記で紹介した障害者手帳を持つメリットをこちらで詳しく解説していきます。実際に受けられるサービスの詳細は以下の通りです。また、自治体によって割引率や受けられるサービスなども違うので色々と調べてみるとさらにメリットがあります。

◇ 医療費の負担減

自立支援医療や心身障害者医療費助成制度(重度心身障害者医療費助成制度)=通称『マル障』などにより、通院の費用や入院の費用が1割負担まで抑えることができます。
通院代の診察にかかる費用などはもちろんのこと、薬代も対象になるので様々な薬を併用されている方に取ってはかなり負担減になる制度です。
ただし収入制限もあり、年収が450万円~500万円ほどを超えるようになるとこの対象外になる可能性もあります。手取り月収なら30万円~35万円ほどになります。

◇ 税金の控除

◼ 所得税の控除:27万円

◼ 住民税の控除:26万円

それぞれの税金が上記の金額で控除されますが、税金がそのまま減るわけではありません。
(少し複雑な計算式があるのですが)もの凄く簡略化をすると住民税が2万6,000円、所得税が1万3,500~4万500円まで減免されることになります。
(所得税の幅はかなり大きいのですが、これは年収によって大きく左右されます。)

◇ 割引等のサービス

鉄道・映画館・美術館などの割引サービスがよく言われます。また、バスなどの機関でも会社によっては半額ほどになることもあり、それぞれのHPで確認してみるとお得な割引制度があります。
実は全ての割引サービスが一律というわけではなく、それぞれの障害や等級によって割引率なども変わってきます。例えば、都電、都バス、都営地下鉄及び日暮里・舎人ライナーは身体障害の人は等級や状態によって変わってきますが、精神障害福祉手帳を持つ場合は一律で無料になります。
このように、様々なサービス、手帳によって得られる割引サービスが変わってくるので、自分の仕事や生活スタイル、趣味にあった割引サービスを利用するのが一番良いでしょう。
これらを網羅的に集めているサイトがこちらになります。
 

障害者手帳について正しい知識を持とう

最も大切なことは、自分の障害で受けられるサービスを自分で調べて知っていくことです。
障害者手帳の取得によって得られるサービスは各自治体や運営企業によって大きく異なります。
実は、障害福祉課の人に問い合わせをしても担当者がよく知らない場合すらあります。なぜなら障害者の方からの問い合わせがあまり多くないことも理由の一つです。
しっかり調べた上で福祉課の担当の方と相談をすることが大切です。障害の内容によっては上手く表現ができない場合などもありますので、両親や信頼できる人に一緒に来てもらうことも大切になるでしょう。
 

障害者雇用での新卒入社を目指す人は家でも就活オンラインを活用しよう

◇ 家でも就活オンラインとは?

「家でも就活オンライン」は、全国の障害学生1000名以上が活用する障害学生のための就活・就職・求人サイトです。障害者雇用に関する就活のイベントや、お役立ち情報の発信、個別相談や求人紹介などを行っています。学生の皆様は無料でお使いいただけます。
<こんな学生におすすめ>
・障害学生の就活の情報が少なく困っている
・一人で頑張っているけど、自分のやり方でいいのか不安
・就活に向けて何から始めたらいいかわからない
・自分に合った企業や仕事がわからない

◇ 家でも就活オンラインでできること

◼ 内定者、先輩社員、人事担当に会える/障害者雇用を知る『就活イベント』

オンライン就活イベントを開催。障害者雇用では必ず知っておきたい情報の提供イベントや疑似インターン企画、内定者、先輩社員、企業の人事担当との交流イベントなど、障害学生の皆様の就活に役立つ様々な機会をご提供します。

◼ 障害者雇用を知る『就活お役立ち情報』

障害者雇用の生の情報や、先輩の就活体験談を動画化。手軽に、必要な情報が手に入ります。
また、障害者雇用の仕事を体感したい方向けに、オンラインで障害者雇用の仕事を疑似体験できるコンテンツもご用意しています。障害者雇用を知って、就活を有利に進めましょう。

◼ 求人に応募する『個別相談&求人紹介』

新卒障害学生を積極的に採用している企業のオンライン説明会を開催し、求人紹介を行っています。
説明会では、企業がどのような思いやビジョンで障害者雇用に取り組んでいるかをじっくり知ることができます。また求人紹介では、あなたに合った企業を一緒に考えます。
 
 
🖊 この記事を書いた人・監修
記事を書いた人
銀河
上智大学卒。ASD(自閉症スペクトラム障害)とADHD(注意欠陥多動性障害)の当事者。ASD優位で空気を読むことが大の苦手。新卒で営業としてキャリアをスタートするも、約1年でうつ病を発症。復職し、発達障害であることの強みを活かして営業成績2位をおさめる。入社満3年を迎えるとともに退社し、会社の同期が設立したCare Earth(株)に誘われ参画。現在はCare Earthの仕事と同時並行しライターやプログラミング、コミュニティ運営を行う。
 
<著書>