障害年金取得の条件や金額・申請方法などを当事者が解説!

 
障害年金は障害や病気により生活や仕事などが制限される方を対象に支給される制度です。市区町村単位ではなく、厚生労働省の管轄の日本年金機構によって管理をされています。そのため、都道府県単位で運営されている障害者手帳とは別で独立した制度となっています。また、「障害基礎年金」「障害厚生年金」の2種類があり、受給の要件も異なります。この記事では、障害年金の種類や受給金額、申請方法、受給要件などを解説していきます。
 

障害年金とは?

日本の年金制度には老齢年金、遺族年金、障害年金があり、それぞれの受給金額や対象者が異なります。本記事ではその中でも「障害年金」について解説をしていきます。
障害年金は、病気や怪我で仕事や生活が制限される方が受給できる年金制度で、身体障害や精神的な障害、発達障害などの障害がある方が対象になります。また、年金というと高齢者が受け取るイメージがありますが、障害年金は65歳以下の年齢でも受け取ることができます。(むしろ、原則として65歳までに請求しないと受給できません。)
障害年金は2種類あり、障害基礎年金障害厚生年金の2種類があります。この2つの受給条件には障害の程度も大きく関係しますが、障害の診断をいつ受けたか(初診日)や、症状が固定した日(治療をしてもそれ以上の効果が期待できない状態)が関連し、少し複雑なのでその部分も詳しく解説していきます。
障害年金というと障害者手帳が似たような制度でありますが、この2つは独立しており、障害年金を受給するために障害者手帳は必ずしも必要にはなりません。(障害年金の受給があれば、障害者手帳の申請や更新が楽になるなど副次的なメリットはあります。)
まだ障害者手帳の申請を行っていない方や申請中の方にも役に立つ記事ですので、是非ご活用ください。
 

障害年金の対象となる障害

障害年金の受給対象は、以下のような障害があります。

◇ 身体的な障害

視覚障害、聴覚障害、肢体の障害 など

◇ 内部的な障害

呼吸器疾患、心疾患、腎疾患、肝疾患、糖尿病 など

◇ 精神障害

統合失調症、うつ病、認知障害、てんかん、発達障害 など
他にも様々な種類の障害が障害年金の対象として認定をされていますので、詳しくは日本年金機構のHPをご覧いただくことをお勧めします。
 
身体的な障害は分かりやすい部分もありますが、精神的な障害については少し分かりづらい部分や、1つの障害だけではあまり重度と判定されない場合もあります。例えば、発達障害を抱えたことにより常に抑うつ症状があれば、1つの障害よりも重いものと判定されることがあります。そのように1つだけの障害として見ずに、生活にどのような支障が出ているかをベースに考えることも大切です。
 

障害年金の受給金額はどれくらい?等級はどのように決まる?

障害年金の受給を考える上で気になるのが実際の受給金額。受給金額は等級によって決められます。障害基礎年金の等級は1級、2級、障害厚生年金については1級、2級、3級とあり、その等級によって受給金額は変わり、併用して受給できるかによっても金額が大きく変わってきます。
ここで、ポイントになるのが先ほどお伝えした初診日です。障害基礎年金は初診日がいつでも関係なく受給できますが、障害厚生年金を受け取れる人は会社勤めをしていた期間に障害の診断を受けた人が対象です。少し複雑な言い方になってしまいますが、厚生年金に加入している期間であるサラリーマンやOLの時に障害の認定を受けると、厚生年金を受け取る資格を持てます。(発達障害などは生まれた時から障害はありますが、会社勤めの時に初診日があればその日が初診日となります。)この初診日によって受け取れる年金額が大きく変わってくることがあります。それが以下の通りです。
受給金額については以下の表をご覧ください。障害基礎年金と厚生年金の両方を受け取ることができれば、月に20万円前後を受け取ることも可能です。

障害基礎年金

等級
 
受給金額(年額)
 
受給金額(月額)
1級
 
¥993,750
 
¥82,813
2級
 
¥795,000
 
¥66,250
 
※子供がいる家庭はさらに子の加算があります。
 

障害厚生年金

等級
 
受給金額(年額)
 
受給金額(月額)
1級
 
144~180万円
 
12~15万円
2級
 
120~144万円
 
10~12万円
3級
 
60~72万円
 
5~6万円
 
※1級、2級に関しては配偶者の有無と子供の有無で加算があります。

【1級】障害年金受給金額

(最低)
障害基礎年金
 
¥993,750
 
障害厚生年金
 
¥1,440,000
 
受給金額(年額)
 
¥2,433,750
 
受給金額(月額)
 
¥202,813
 
 
(最高)
障害基礎年金
 
¥993,750
 
障害厚生年金
 
¥1,800,000
 
受給金額(年額)
 
¥2,793,750
 
受給金額(月額)
 
¥232,813
 

【2級】障害年金受給金額

(最低)
障害基礎年金
 
¥795,000
 
障害厚生年金
 
¥1,200,000
 
受給金額(年額)
 
¥1,995,000
 
受給金額(月額)
 
¥166,250
 
 
(最高)
障害基礎年金
 
¥795,000
 
障害厚生年金
 
¥1,440,000
 
受給金額(年額)
 
¥2,235,000
 
受給金額(月額)
 
¥186,250
 

【3級】障害年金受給金額

(最低)
障害基礎年金
 
¥0
 
障害厚生年金
 
¥600,000
 
受給金額(年額)
 
¥600,000
 
受給金額(月額)
 
¥50,000
 
 
(最高)
障害基礎年金
 
¥0
 
障害厚生年金
 
¥720,000
 
受給金額(年額)
 
¥720,000
 
受給金額(月額)
 
¥60,000
 
 
いかがでしょうか。障害厚生年金を受け取れるかにより、月額で10万円以上も年金額が変わってしまう場合があります。特に精神的な障害の場合の方がそうなのですが、退職してから障害の診断を受けてしまうと障害厚生年金の申請資格を失ってしまうので、必ず会社に属している間に診断を受けることが大切です。
また、上記の計算額、実際には平均標準報酬月額を年金の加入月数で割り、そこから年金額を出すという複雑な式で計算をされるのですが、その計算式を出してもリアルな数字がイメージできませんでしたので、以下の参考のサイトから概算でどれぐらいの受給金額になるのかを算出しています。
【参考(外部リンク)】NPO法人 障害年金支援ネットワーク
 
【参考(外部リンク)】日本年金機構
 
 

障害年金はいつまで貰えるのか

障害年金はいつまで貰えるのでしょうか。おそらく、抱えている障害によって感覚が変わってくると思います。
身体的な障害がある方であれば固定化されているので、一生涯という感覚を持つかと思います。一方で精神的な障害がある人は、障害者手帳と同じように更新が必要ということが感覚としてイメージできると思います。
答えとしては上記に挙げた通りで、身体的な障害は永久認定となり、更新することは殆どありません。一方で精神的な障害は有期認定といい、1年ごとに更新を行う場合が多く、その度に診断書を医師に記載してもらい申請する必要があります。しかしながら更新をしっかり行えば、半永久的に障害年金の支給が続くことになります。(症状が寛解した場合などは別です。)
また、年齢についての制限がなく、一度認定を受ければ更新をしていけば受給できます。障害者雇用などで働きながら年金の納付をしっかり行っていれば、老後の心配はあまりなく生活を送ることも可能でしょう。一方で遡及請求といい、申請日から5年前まで遡って申請を行うことができます。初診から1年6ヶ月を経過した後でいつでも申請可能です。その間で障害年金は受け取れないと思っていた人も、実際に申請をしてみたら遡って受給することができた例もあります。
 

障害年金をもらうデメリットはあるのか

障害年金を受給すること自体にデメリットはないと思いますが、とにかく申請が複雑で時間がかかってしまいます。
必要な書類も障害によって多少異なることや、初診日がいつであるかをしっかり証明できるか、申請後も受給の決定までに5ヶ月程度かかることもあります。
また、しっかりと書類を集めたとしても不支給で決定してしまうこともあり、その場合の再審査請求を行う際にも主治医などと相談して行う必要があります。
障害年金の診断書は保険適用にならないため、5,000円~10,000円ほどを自己負担して診断書を書いてもらう必要があります。
そのため、申請を躊躇される方もいると思いますので、自治体の窓口や年金事務所、年金相談センターなどに相談することもオススメです。
 

障害年金の申請に必要な書類

障害年金を申請するのに何か特別に取得するものはありません。大まかに以下のような書類が必要になります。
<申請に必要な書類>
・年金請求書
・基礎年金番号通知書や基礎年金番号が分かる書類
・本人の生年月日が分かる書類(住民票や戸籍謄本など)
・医師の診断書
・受診状況等証明書
・病歴・就労状況等申立書
・受取先金融機関の通帳など
1つ1つを揃えていけばあまり難しいことはありませんが、何を書くのが正しくて何が間違っているのかが分かりにくいです。特に、医師の診断書は何が重要なのか分かりづらいため、医師と話し合いながら進めていく必要があります。どのように症状を書くのかについては医師としっかり話し合う必要がありますので、実際にどのように困っているかを書いていくのが良いでしょう。
また、受診状況証明書は初診の診断から年数が経過しており、初診の診断書の取り寄せが難しい場合もあります。精神障害がある方の中には、はっきりと診断名を伝えられてないことや、ここ数年で何度か障害の名前なども変化してきているため、正しい内容がわからないこともあります。
他にも、何年か経過した間にその病院が廃業してしまっている場合も散見されます。その場合には、特別に診察券や第3者の証言を集めるなどによって証拠を集めることもありますが、何かしらの方法で申請に結びつけることができるので、近隣の年金相談センターに相談をしてみるのも1つの手段です。
 

困ったら社労士に相談するのも1つの手段

さて、ここまで障害年金の自力での申請をお伝えしてきました。しかしながら、中にはこれらの制度が複雑でどうしても自分では申請がなかなか難しい人もいるでしょう。
その場合には、社労士に相談などをすることで、障害年金の申請をサポートしてもらえる場合があります。支給が決定した際に障害年金の何割かを謝礼として支払う必要がありますが、半永久的に支給がされるようになることを考えれば利用するのも1つの手段だと思います。
ただ、社労士のサポートがあると言っても複雑な書類のやり取りなどをする必要が出てくると思います。その場合に備えて、ご家族の方など、頼れる方に相談やサポートをお願いしながら手続きを進めていくのがオススメです。
 

障害年金申請まとめ

いかがでしたでしょうか。
ここまで障害年金についての申請から金額、更新方法や申請をする上での注意点などを解説してきました。
障害年金を申請する上で大切なことは、やはり主治医としっかり相談した上で診断書を書いてもらうことです。特に、精神的な障害を抱えている人は外から見ただけでは障害の重さなどはわかりません。医師と話し合い、どのようなことに苦労を抱えているのか、何がうまく行ってないのかを医師に把握しそれを診断書に反映してもらうことが大切です。
自分の障害にあった等級に判定されるようにするためには、自分のことをしっかり伝えていくのが大切です。書類の作成などももちろん大切ですが、やはり重視されるのは診断書の内容です。申請をする際には、その部分を頭に入れて行うようにしてください。
 

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🖊 この記事を書いた人・監修
記事を書いた人
銀河
上智大学卒。ASD(自閉症スペクトラム障害)とADHD(注意欠陥多動性障害)の当事者。ASD優位で空気を読むことが大の苦手。新卒で営業としてキャリアをスタートするも、約1年でうつ病を発症。復職し、発達障害であることの強みを活かして営業成績2位をおさめる。入社満3年を迎えるとともに退社し、会社の同期が設立したCare Earth(株)に誘われ参画。現在はCare Earthの仕事と同時並行しライターやプログラミング、コミュニティ運営を行う。
 
<著書>