障害学生の可能性を広げる採用の事例
株式会社公文教育研究会 人事部採用育成チーム 藤田様・嶌田様
「家でも就活オンライン」(以下、家就)は障害のある大学生と企業のマッチングのためイベント・情報発信・エージェントなど多様な出会い方を準備しています。今回は家就を活用して新卒障害学生の採用活動を行っている株式会社公文教育研究会 人事部採用育成チームから、藤田様、嶌田様にお話を伺います。
<本記事の要約>
1)障害のある大学生採用を始めた背景を教えてください
藤田様:以前から、正社員で障害のある方を採用する動きは一定ありましたが、2017年あたりから、法定雇用率が上がっていくことをきっかけに、より本格的に障害者の採用について考える流れになっていった背景があります。
中途採用や契約社員採用などに取り組み、ご入社いただけた方も複数いらっしゃいました。ただ弊社の採用ではスキルだけでなく「私たちの理念、ビジョンに共感いただけるか」をとても大切に考えていますので、KUMONに共感いただける方を新卒で採用し、育成してみようという方向性ができてきました。入社時に何ができるかよりも「入社してからどのように成長していっていただけるか」を考えて新卒中心になったという経緯です。その後21年卒から本格的に新卒採用を進めています。
中途採用や契約社員採用などに取り組み、ご入社いただけた方も複数いらっしゃいました。ただ弊社の採用ではスキルだけでなく「私たちの理念、ビジョンに共感いただけるか」をとても大切に考えていますので、KUMONに共感いただける方を新卒で採用し、育成してみようという方向性ができてきました。入社時に何ができるかよりも「入社してからどのように成長していっていただけるか」を考えて新卒中心になったという経緯です。その後21年卒から本格的に新卒採用を進めています。
- 障害者雇用ベースの考え方から貴社の求める人物像に戻っていった結果、マッチする方法が障害学生の新卒採用だったということでしょうか。
藤田様:そうですね。障害者雇用に限らず採用全般においてKUMONの目指すものにどう共感していただけるかは大きなテーマで、そこは障害の有無に関係ないところだと思います。
障害者採用の議論の初期には特例子会社などの方向性も議論はありましたが、可能性の追求を目指す企業として、障害をお持ちだからといって処遇や業務内容を最初から分けるのは違うと考えました。社員がそれぞれ自分の可能性も追求していく風土が強いので、目先の雇用率を気にして「ルーチン業務だけを続ける人」として採用したくなかったんです。だからこそ新卒で社会人経験の最初から成長を支援していこうということになりました。
障害者採用の議論の初期には特例子会社などの方向性も議論はありましたが、可能性の追求を目指す企業として、障害をお持ちだからといって処遇や業務内容を最初から分けるのは違うと考えました。社員がそれぞれ自分の可能性も追求していく風土が強いので、目先の雇用率を気にして「ルーチン業務だけを続ける人」として採用したくなかったんです。だからこそ新卒で社会人経験の最初から成長を支援していこうということになりました。
2)新卒の障害者雇用を進める上で、難しかったことや逆に良かったことを教えてください
藤田様:最初は社内の意識醸成が課題でした。
2018年ごろ、管理職以上の社員を対象に障害者雇用の勉強会を行いました。業務の切り出しの考え方、できないことではなくできることを見ていくこと、障害はその人の中ではなくその環境に障害があるという考え方といった話は弊社の企業理念とも非常に親和性の高いテーマですので、参加者のアンケートもかなり肯定的でした。
ただ、実際自分のチームに障害をお持ちの方が配属される、自分が上司になる、となると二の足を踏んでしまうのが正直なところでした。実際に一緒に働き、育成するイメージはすぐには湧かなかったのだと思います。
そういった状況で新卒採用で最初に内定を出した方々は、最初は人事本部の関連部署に配属する方向で話が進んでいました。ただ、ここまで意識醸成してやっと採用したた新人を人事本部内に留めるのは勿体ない!と思ったんです。
実際は、役職者などと詳しく話をしていくと、人事にこだわらずその人の成長環境を考えて最善の配属を、という同じ気持ちを持っていることも分かりまして、結果的には人事以外の部署に配属になりました。
初年度に人事部外に配属できたことはとてもよかったと思っています。他の本部、他の部署に受け入れてもらうことが一つの大きなハードルでしたので。
2018年ごろ、管理職以上の社員を対象に障害者雇用の勉強会を行いました。業務の切り出しの考え方、できないことではなくできることを見ていくこと、障害はその人の中ではなくその環境に障害があるという考え方といった話は弊社の企業理念とも非常に親和性の高いテーマですので、参加者のアンケートもかなり肯定的でした。
ただ、実際自分のチームに障害をお持ちの方が配属される、自分が上司になる、となると二の足を踏んでしまうのが正直なところでした。実際に一緒に働き、育成するイメージはすぐには湧かなかったのだと思います。
そういった状況で新卒採用で最初に内定を出した方々は、最初は人事本部の関連部署に配属する方向で話が進んでいました。ただ、ここまで意識醸成してやっと採用したた新人を人事本部内に留めるのは勿体ない!と思ったんです。
実際は、役職者などと詳しく話をしていくと、人事にこだわらずその人の成長環境を考えて最善の配属を、という同じ気持ちを持っていることも分かりまして、結果的には人事以外の部署に配属になりました。
初年度に人事部外に配属できたことはとてもよかったと思っています。他の本部、他の部署に受け入れてもらうことが一つの大きなハードルでしたので。
3)新卒採用を始めてみて、難しかったことはありますか?
藤田様:初期は本当に手探りでした。最終選考の前に個別で面談をして、面接ではない場でどういう配慮が必要かを聞いてみるなど、コミュニケーション量を増やすことから始めました。初年度は正直、あまり障害を感じさせない人が内定になったと思います。今度はその「一般新卒と変わらないから大丈夫だろう」からどう脱却するかがテーマになっていきました。
ただ、入社後きちんと定着して成長していく成功事例を作ることで後が続いていくので、最初はあまりハードルを下げすぎなかったのは結果的に良かったのかなとも思っています。障害に起因して体調が不安定になることもあるようですが、そういう波も含んでの障害者採用だとも思っています。
ただ、入社後きちんと定着して成長していく成功事例を作ることで後が続いていくので、最初はあまりハードルを下げすぎなかったのは結果的に良かったのかなとも思っています。障害に起因して体調が不安定になることもあるようですが、そういう波も含んでの障害者採用だとも思っています。
嶌田様:新卒採用をスタートした当初は、応募はいただいたものの合格にならないことが多かったので、求めているものが高いなと感じるときもありました。今後はもう少し幅を広げられないかとも思っています。
とはいえ、業務内容も処遇も障害の有無で分かれているわけではなく個人別なので、正解も不正解もないとは思っています。KUMONの教室の中でも、障害をお持ちの方も含めて皆同じ教室の中で同じプリントを解いています。枚数や復習の回数、進むスピードが少し違うというだけで、それは障害の有無にかかわらずゆっくりなペースの子もいれば早いペースの子もいる、という中での一つのその子の個性として見ています。そのあたりは会社での仕事も同じで、これがKUMONの考え方なのだと思っています。
とはいえ、業務内容も処遇も障害の有無で分かれているわけではなく個人別なので、正解も不正解もないとは思っています。KUMONの教室の中でも、障害をお持ちの方も含めて皆同じ教室の中で同じプリントを解いています。枚数や復習の回数、進むスピードが少し違うというだけで、それは障害の有無にかかわらずゆっくりなペースの子もいれば早いペースの子もいる、という中での一つのその子の個性として見ています。そのあたりは会社での仕事も同じで、これがKUMONの考え方なのだと思っています。
- 新卒障害学生の採用フローやその過程での配慮や工夫、難しかったことはありますか?
選考で一般採用と違うのは、障害者採用では三次選考から対面を入れていることです。一般採用の三次選考はオンラインで個人面接ですが、障害者採用は三次選考と最終選考のどちらも対面で行います。また、三次選考と最終選考の間にオンラインの個人面談で障害や配慮のことをお話します。コミュニケーションを多く取るという意味では、一般の方々よりも距離感がグッと近づく印象があります。
選考で難しかったのは、エンカレッジさんにも相談させていただいたことですが、障害の特性上、SPI検査の実施が難しいことがありました。採用を進める上で初めて難しいと感じた経験でした。こういう場合に今後どうしたらいいのかを考えるきっかけを与えてくださったなと思っています。
採用フローの中で悩んだところはそれくらいで、障害の特性に合わせて配慮をできればいいのかなと思っています。
選考で難しかったのは、エンカレッジさんにも相談させていただいたことですが、障害の特性上、SPI検査の実施が難しいことがありました。採用を進める上で初めて難しいと感じた経験でした。こういう場合に今後どうしたらいいのかを考えるきっかけを与えてくださったなと思っています。
採用フローの中で悩んだところはそれくらいで、障害の特性に合わせて配慮をできればいいのかなと思っています。
- 貴社は基本的な選考フローのベースはしっかり構築しつつ、個別に調整をする柔軟性をお持ちのように感じるのですが、新卒障害者採用は柔軟に個別対応しようといった指針を持っていての結果なのでしょうか?
藤田様:企業の合理的配慮の義務の範囲だと思っていたので、そんなに特別柔軟にしている印象は持っていなかったです。社内の採用に関する議論で、障害者に限らず全般的に多様な人材を取っていくことで会社として強くなるのではないか、同質性が高まっていってはいけないのではないか、という議論がここ数年あったので、「選考フローに乗れないなら落とします、というのはいかがなものか」というのは、議論のテーブルに乗せやすかったのかもしれません。
選考についても、この選考で本当にその人の良さを全部引き出せているのかという議論もしていました。
最近、社内で活躍している人材が採用時はどうだったのかを分析したのですが、元々思っていた「成果を出す社員の素養」と違う特徴を持つ社員も、経験する業務や育成環境次第で活躍人材になる事例が多くあると分かってきました。
そこで、私たちがいいと思っているものは本当にそれで合っているのか?いい人材って何だろう?と改めて考えているところです。今はよりいろんな人を検討に上げていこうという流れがあるので、障害者採用での個別対応の動きにもつながっています。
選考についても、この選考で本当にその人の良さを全部引き出せているのかという議論もしていました。
最近、社内で活躍している人材が採用時はどうだったのかを分析したのですが、元々思っていた「成果を出す社員の素養」と違う特徴を持つ社員も、経験する業務や育成環境次第で活躍人材になる事例が多くあると分かってきました。
そこで、私たちがいいと思っているものは本当にそれで合っているのか?いい人材って何だろう?と改めて考えているところです。今はよりいろんな人を検討に上げていこうという流れがあるので、障害者採用での個別対応の動きにもつながっています。
4)新卒として入社した方はどう活躍されていますか?
嶌田様:体調を崩してしばらくお休みされた方もいらっしゃいますが、無事に復帰されて頑張っていると聞いています。同じオフィスで働いている方は最初の1年を終え、大きく休むこともなく自分のリズムを大事にしながら大活躍されています。
出社とリモート併用しながら働かれていて、その方に一年経ったねというお話をしたときには、「周りの方にすごくサポートいただいているので」という言葉がありました。もちろんご本人も頑張っていますし、周りも声をかけたりすることで一人前に担当の業務を行えています。その方には障害者採用のイベントでも話していただいたのですが、しっかり自分の振り返りを言語化できていて、本当に今頑張っておられるなと思います。
出社とリモート併用しながら働かれていて、その方に一年経ったねというお話をしたときには、「周りの方にすごくサポートいただいているので」という言葉がありました。もちろんご本人も頑張っていますし、周りも声をかけたりすることで一人前に担当の業務を行えています。その方には障害者採用のイベントでも話していただいたのですが、しっかり自分の振り返りを言語化できていて、本当に今頑張っておられるなと思います。
- 研修は一般新卒と一緒だったと思いますが、入社後に関しては定期面談など配慮として特別な体制などは敷いていますか?
嶌田様:入ってからの導入研修期間中は少しフォローをしています。その方がお持ちの障害やご本人の希望に応じて、導入研修期間中は毎日面談した方もいれば、二、三日に一回面談といった形の時もありました。毎日研修が終わった後に15分ほど、体調のことだったり、研修の内容であったり、不安に思っていることなどを話していました。そのあとの配属後の育成は部署内で行うので、私から導入研修期間中の様子は逐一連絡しつつ少しずつ移行していって、基本的には配属先部署の方々メインで関わっていただいています。
藤田様:配属後も障害のあるなしに関係なく、集合研修の研修の際の様子を見ていて心配なことがあればその部署の上長と連絡を取っていますが、ここ数年の障害者採用の社員ではあまり気になるところが出てきていないので、結果的に個別の動きはしていなかったと思います。
- 採用でのハードルを一定超えている方が入社しているからうまくいっているのでしょうか?
藤田様:自己理解度は大事だなとは思いますね。自分の特性やできる、できないの理解と、自分で自分をどこまで認められているかということが大事だと思っています。
5)家でも就活を活用された背景や活用してみての感想を教えてください
嶌田様:いつも非常に気持ちよくイベントに参加させていただいているという感触がまずあります。ある程度弊社のことをエンカレッジさんが知ってくださっているので、声をかけていただいた上でご参加されている学生の方もいらっしゃるのかな?と思った時に、KUMON自体がどういう会社かをすごく理解してくださっているのはものすごくありがたいなと思っています。
障害をお持ちの学生さんの中には、直接弊社のサイトに来てエントリーすることをためらう方もおそらくたくさんいらっしゃるように思いますが、そこにエンカレッジさんが入ることで情報をお伝えできる、人が増えるという意味では、エンカレッジさんの存在は大きいと思っています。
あとは、学生からもらう質問に、こういうことが気になっているのかとハッとさせられることがあって、それをダイレクトに教えていただける場にもなっていると感じています。
これまでもいくつかエンカレッジさん以外にも、他社さんのセミナーなどに出させていただいたりもしましたが、KUMONのことを一番理解してくださっているところが大きいなと思います。それによって、「それだったらKUMONの話聞いてみたらどう?」といったやり取りが学生の方とエンカレッジさんとでなされているんじゃないかなと想像できるような感触を持っています。他社さんではイベント規模は大きいけれど一対一の距離があるなと感じたりとか、いろいろ参加させていただくことでわかる違いとして、エンカレッジさんはすごくアットホームな感じがしますし、学生さんとの距離の近さ、弊社との距離の近さを感じます。
障害をお持ちの学生さんの中には、直接弊社のサイトに来てエントリーすることをためらう方もおそらくたくさんいらっしゃるように思いますが、そこにエンカレッジさんが入ることで情報をお伝えできる、人が増えるという意味では、エンカレッジさんの存在は大きいと思っています。
あとは、学生からもらう質問に、こういうことが気になっているのかとハッとさせられることがあって、それをダイレクトに教えていただける場にもなっていると感じています。
これまでもいくつかエンカレッジさん以外にも、他社さんのセミナーなどに出させていただいたりもしましたが、KUMONのことを一番理解してくださっているところが大きいなと思います。それによって、「それだったらKUMONの話聞いてみたらどう?」といったやり取りが学生の方とエンカレッジさんとでなされているんじゃないかなと想像できるような感触を持っています。他社さんではイベント規模は大きいけれど一対一の距離があるなと感じたりとか、いろいろ参加させていただくことでわかる違いとして、エンカレッジさんはすごくアットホームな感じがしますし、学生さんとの距離の近さ、弊社との距離の近さを感じます。
6)障害者採用に応募したい学生に準備してきてほしいことを教えてください
嶌田様:必要な配慮は聞きたいと思っていますが、障害があるからどうということは特にないです。障害の内容によって合否が決まることはなく、一般採用と同じように判断させていただきます。
藤田様:ただ、配慮事項を考えたときに、自己開示ができるかどうかはもしかしたらより丁寧に見ているかもしれません。
嶌田様:自己開示や周りに助けを求めること、自分の状況を話すことは新人にとって必要なので、そうやってチームメンバーと関わる様子がイメージできることは大切なのかもしれません。
藤田様:逆に、障害による制約がある中でも「やりたい」を諦めずに取り組んできた人は魅力的にうつります。その意欲を持っていれば、仕事の中で成長していけると思いますので。もちろん障害を乗り越えてきたから偉いというわけではなくて、障害に限らずいろんな逆境がある中で、そこから学び取ったことがしっかりある人は、その分内省が深いので入社後の成長も期待できるように思います。そのチャレンジの大小が他の人と比べて大きいか小さいかはあまり問題ではなくて、本人にとっての成果や、その経験から何を学んだのか、何でそれをしようと思ったのかが言語化されていることが大事です。
- 最後に、学生に向けてメッセージをください。
藤田様:もちろん初めて就職するので、障害がある中で働き続けていけるのかという不安な気持ちはよくわかりますし、そのために働いていける環境を見定めようとするのは大事だと思いますが、あまりそればかりにならないでいただきたいです。
こうなっていきたい、これがしたい、ということを描いていただきたいし、それが語れてこそいい就職ができていくはずだと思います。入社後どうなっていきたいか、これがしたい!ということを本人が思ってくれていないと、こちらも育成のストーリーが描けないので、入社後の育成という意味でも持ってきてくれた方がありがたいです。
配慮については相談できるので、今何があるかではなく、相談して必要なものを作っていける環境がある企業かどうかが大事。今ある環境だけで決めるのはもったいないよということは投げかけていきたいです。
こうなっていきたい、これがしたい、ということを描いていただきたいし、それが語れてこそいい就職ができていくはずだと思います。入社後どうなっていきたいか、これがしたい!ということを本人が思ってくれていないと、こちらも育成のストーリーが描けないので、入社後の育成という意味でも持ってきてくれた方がありがたいです。
配慮については相談できるので、今何があるかではなく、相談して必要なものを作っていける環境がある企業かどうかが大事。今ある環境だけで決めるのはもったいないよということは投げかけていきたいです。
嶌田様:それが100%叶うかどうかは状況によりけりですが、少なくともこういうことがしたいという気持ちは無下にしたくないと考えています。こういう障害があるけどできるかな?というのがどうしても先に立つと思いますが、それと同じぐらい、こういうこともやってみたいな、ということを考えて、まずは扉を叩いていただければと思います。
藤田様:KUMONでなければいけない理由が本人の中にある方が入社されますし、こちらもその熱意や志を元に育成していきます。ぜひ描いてください、というところでしょうか。