新卒障害学生の採用は自然なながれ
~過去や固定概念にとらわれず、フラットな視点で採用活動~
~過去や固定概念にとらわれず、フラットな視点で採用活動~
TOTO株式会社 人財本部ダイバーシティ推進部ダイバーシティ推進G 藤田浩史様
「家でも就活オンライン」(以下、家就)は障害のある大学生と企業のマッチングのためイベント・情報発信・エージェントなど多様な出会い方を準備しています。今回は家就を活用して新卒障害学生の採用活動を行っているTOTO株式会社人財本部ダイバーシティ推進部ダイバーシティ推進G藤田浩史様にお話しを伺います。
<目次>
1)家就を利用する前の障害者雇用について教えてください
家でも就活オンライン(以下、家就)は、私が人事に異動した年に利用を開始しました。異動前は人事と全く関係のない部署で働いてきて、すべてが右も左もわからない状態でした。私が担当する前は身体障害の方を中心に採用活動を行っていたようです。しかしなかなか採用に結びつかず、採用活動の進め方自体迷っている状態でした。
私自身、具体的な進め方がわからず暗闇の中を手探りでやっていたような状態でしたので、「中途採用がいい」といった先入観もなく、一旦リセットして、トライ&エラーでやってみようという意識で進めることができました。ハローワークに求人を出し、自治体の障害者雇用拡大事業のイベントにも参加したり、就労移行支援事業所や地元の大学と関係をつくり、インターンシップの受け入れも始めました。いろんな研修にも参加していく中で、徐々に自分の中で芯ができてきたように思います。実際にいろいろと動いてみると、共感したり助けてくれたりする人がいて、とても勇気づけられてきたと感じます。
私自身、具体的な進め方がわからず暗闇の中を手探りでやっていたような状態でしたので、「中途採用がいい」といった先入観もなく、一旦リセットして、トライ&エラーでやってみようという意識で進めることができました。ハローワークに求人を出し、自治体の障害者雇用拡大事業のイベントにも参加したり、就労移行支援事業所や地元の大学と関係をつくり、インターンシップの受け入れも始めました。いろんな研修にも参加していく中で、徐々に自分の中で芯ができてきたように思います。実際にいろいろと動いてみると、共感したり助けてくれたりする人がいて、とても勇気づけられてきたと感じます。
2)“新卒障害学生採用”を意識したきっかけを教えてください
私自身は新卒も中途もあまり意識していませんでした。幸い、新卒の人に来てほしいという空気が社内にはありました。ある意味出来上がった社会人よりも若い人を一から育てるのが我々の役目、といった認識でしょうか。また時代と逆行しているのかもしれませんが、若い人に長く勤めてほしい、という意識の人も多いですね。なのでどちらかといえば「大学生」「新卒」が自然と採用の中心になっています。
古い言い方ですが、新卒の人は社会にとって「金の卵」なんです。我々に代わって次の世代を担ってくれるありがたい存在ですので、大切に育てたいとみんな思っているんですよ。
古い言い方ですが、新卒の人は社会にとって「金の卵」なんです。我々に代わって次の世代を担ってくれるありがたい存在ですので、大切に育てたいとみんな思っているんですよ。
- 新卒採用の選考ステップについて、工夫している点やこだわっている点を教えてください。
新卒も経験者も同じ選考ステップです。「新卒だから」と特に工夫している点はありませんが、最初の書類選考や適性検査において単純な基準値での選定はせず、その人の強み・得意を重視して選考をしようと心がけています。単に数値だけで線引きをしないほうがいいと思っています。選考ステップとしては、1次面接を人事で行い、2次面接は配属が想定される職場も一緒に行い、合格であればその職場で体験実習をして、最終面接となります。2次面接でちょっとどうかな、と思う人が、実際に職場で体験実習をやってみると、職場側も本人もお互いに気に入ってくれて無事採用内定となるパターンもあるんです。
- 職場実習の受け入れに社内で反発があるという企業の話もよく聞きますが、御社ではどうでしたか?
部署によって、温度差があるのは事実です。話を持っていったところで、最初から否定されることも正直あります。でも総じていうと、障害に対する先入観を持っている人は少ないかな、と思います。発達障害の特性の説明をしたときも「そんなの社内にも普通にいるよね」と言われたこともあります。
3)家就を活用しようと思った理由を教えてください
メールで研修の案内をもらったのが始まりです。当時は人事としてのノウハウがなく、割ける人工もなかったので、オンラインで1時間であればと思って参加しました。その後、個別に連絡を取る中で、自然と家就に傾いてきました。家就はシステマチックじゃないんです。オートマチックに進めたり、いきなりエージェントを勧めてきたりせずに、右も左もわからない状況にもまずは寄り添ってくれました。商売度外視で企業担当者間の座談会をしてくれたり、我々企業側と同じ目線に立って一緒に悩んでくれていると感じています。
4)家就を活用してみてどうでしたか?
学生へ直接じっくり話ができるのがよかったです。オンラインですので最初は参加学生の反応も分からず、苦しかったですが、回を重ねるごとに学生がこの時期何を考え、何に悩んでいるのかがわかってきて、こちらの伝えることをブラッシュアップすることで、それなりに手ごたえを感じることができました。それが今の採用活動全体のベースになっていると感じます。
今期は家就から2名入社内定となりました。最初のころはいろいろ動いても応募も少なく、採用できたのはほんの一握り。でも、一通りの採用活動を何度か回して、これぐらいがスタンダードなのかなと思えてきて、不安がなくなってきました。このまま進んでもいいという感覚はもっています。
今期は家就から2名入社内定となりました。最初のころはいろいろ動いても応募も少なく、採用できたのはほんの一握り。でも、一通りの採用活動を何度か回して、これぐらいがスタンダードなのかなと思えてきて、不安がなくなってきました。このまま進んでもいいという感覚はもっています。
5)入社後の配属予定や仕事内容をおしえてください
今期家就から入社内定した2名のうち、Aさんは研究所でユニバーサルデザインのもとになる研究を行っていただき、Bさんは販売部門の支社で総務の業務を行っていただく予定です。自分の強みや長所を活かしつつ、活躍してほしいですね。職場での必要な配慮については本人の申告と面接・体験実習の様子や、大学へのヒアリングを通して把握するようにしています。本人の合意の上、配属職場の上司に伝え、職場のメンバーへ勉強会を開いたりして、職場のメンバーの協力を得るようにし、入社後にスムーズに職場に溶け込めるよう配慮しています。
- 新卒の方が働き続けるために工夫していることはありますか?
オーソドックスですが人事担当者として定期的に定着面談を行い、不安や困りごとを自然に聞かせてもらえるようにしています。職場の人には言いにくいことも言えるような関係をつくるようにしています。職場で仕事のやりとりだけしていてもなかなか見えてこないこともあるので、職場の上司とは違う立場として見るようにはしています。
新卒入社の方は与えられる側から(労務を)提供する側に180度環境が変わるので、その精神的な負担は大変なものがあります。また受け入れる職場のほうも最初はそれなりに不安をもっています。人事部門も関わってくれているという安心感を、本人も職場にももってもらえるようにしたいですね。
これも当たり前のことですが、「障害者」としてではなく一人の人間として向き合うこと、人に対するリスペクトは持つようにしています。実際にみなさんは私なんかよりも優れた面を持っていて、すごいなあ、と思わせてくれますしね。
これも当たり前のことですが、「障害者」としてではなく一人の人間として向き合うこと、人に対するリスペクトは持つようにしています。実際にみなさんは私なんかよりも優れた面を持っていて、すごいなあ、と思わせてくれますしね。
6)新卒障害学生採用の今後の期待や課題を教えてください
当社が解決すべき課題ではありますが、地域差が生まれてしまうことに当初からジレンマを感じています。どうしても大学も企業も首都圏、関西圏が中心になってしまう。そこに学生も多く住んでいるので仕方がないのですが、もう少し地方の大学とも連携しながら進めていく仕組みがあればと感じます。また家就に地方の企業もどんどん参加して、首都圏、関西圏の学生も「この会社で働けるのであればその地方に住んでみようかな」、と思ってもらえる流れができれば面白いですね。
- 藤田さんが今後取り組んでいきたいことはなんですか?
障害者雇用が、社内全体に浸透しているかというとまだまだです。障害者雇用は1つの手段であって、ダイバーシティ&インクルージョンを進めて、働きやすい会社をつくっていくことが目的だと思っています。障害者雇用を一人一人進めていくことも大事ですが、それをもとに障害の社会モデル(※1)の考え方を広めていく、他人ごとではなく自分ごとと思ってくれる人を増やすことが使命だと思っています。「私も協力したい」という人が自然に出てきてくれるような会社にしていきたいですね。
※1 障害の社会モデル
「障害」は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によって創り出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務である、とする考え方(「ユニバーサルデザイン2020行動計画」より)
「障害」は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によって創り出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務である、とする考え方(「ユニバーサルデザイン2020行動計画」より)
7)障害のある学生の採用に悩んでいる企業の担当者に伝えることがあればお願いします
仮に当社が経験者採用だけにこだわり続けていたら、こんなにいい出会いはなかったと思います。「この範囲でしか採用しない」という縛りを自分でつくらないほうがいいと常々思います。採用後も職場任せにせずしっかりコミットする、あきらめないという覚悟ができれば、いくらでもやってみたらいいと思います。
そして、一人で抱え込まないことが大事です。障害者雇用は社内にわかってくれる人がいない、上の理解が進まない、でも法定雇用率は達成しないといけない……社内でも特殊な仕事です。でも外に目を向けると同じ立場の人がいます。私の感覚では障害者雇用に関わる人はみんな「同じ釜の飯」を食っている仲間なんですよね。競合他社でもいいじゃないですか。そういった同じ目線で考えてくれる人たち、寄り添ってくれる人たちと交流して、さらけ出したらいいと思います。私は幸いACE(※2)という団体においても、家就においても仲間をつくってもらえました。最初は自分の会社が遅れていて恥ずかしいという意識から、なかなか開示できなかったのですが、だんだん開き直って自分から開示できるようになると、「実はうちもこれからだよ」みたいな話になっていきました。抱え込むときつくなる。さらけ出せる仲間をぜひつくっていただけたらと思います。
そして、一人で抱え込まないことが大事です。障害者雇用は社内にわかってくれる人がいない、上の理解が進まない、でも法定雇用率は達成しないといけない……社内でも特殊な仕事です。でも外に目を向けると同じ立場の人がいます。私の感覚では障害者雇用に関わる人はみんな「同じ釜の飯」を食っている仲間なんですよね。競合他社でもいいじゃないですか。そういった同じ目線で考えてくれる人たち、寄り添ってくれる人たちと交流して、さらけ出したらいいと思います。私は幸いACE(※2)という団体においても、家就においても仲間をつくってもらえました。最初は自分の会社が遅れていて恥ずかしいという意識から、なかなか開示できなかったのですが、だんだん開き直って自分から開示できるようになると、「実はうちもこれからだよ」みたいな話になっていきました。抱え込むときつくなる。さらけ出せる仲間をぜひつくっていただけたらと思います。
※2 ACE
一般社団法人 企業アクセシビリティ・コンソーシアム(ACE:Accessibility Consortium of Enterprises)
https://www.j-ace.net/
一般社団法人 企業アクセシビリティ・コンソーシアム(ACE:Accessibility Consortium of Enterprises)
https://www.j-ace.net/
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