オープン就労とクローズ就労を徹底比較!当事者の声も聞きました

 
オープン就労とは主に障害者雇用枠での就業です。中には、自分の障害をオープンにしながらも障害者枠ではなく一般枠で働く方もいますが、大多数の方が障害者雇用枠で働くことになります。一方でクローズ就労とは障害を開示せずに一般雇用枠で就業することを言います。障害については面接の際に必ずしも言わなければならないという決まりはないため、障害を開示せずに働くことになります。
今回の記事ではオープン就労とクローズ就労の詳細をお伝えするとともに、メリットやデメリットなど実際の当事者の体験談を交えながらお伝えしていきます。
 

オープン就労/クローズ就労のメリット・デメリット

◇ オープン就労のメリット

オープン就労のメリットは、以下が挙げられます。
  • 障害者雇用は障害のある方の雇用を前提としているため、障害や疾患について理解してもらいやすい
  • 職場環境や業務内容などを企業に相談し、必要に応じて配慮が得られる(合理的配慮)
  • 就労移行支援事業所等のサポートがある場合、本人と企業との間で双方が働きやすくなるよう調整してもらえる
  • ジョブコーチなどの制度を用いて就労環境などを整備してもらいやすい
自分にある障害を伝えて会社で働くことは周りの理解を得やすくなるため自分が働きやすい環境で働くことができます。障害があると急な病欠や早退、通院などの予定を組むことも必要であることや、他にも服薬、場合によっては周りに業務のサポートをしてもらうことが出てきますが、それらの配慮をしてもらいやすくなります。
実際に、2017年に行われた独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 の2017年のデータからも1年後の定着率はオープン就労の方が高いことが見て取れます。
法定雇用率の推移
しかしながら、オープン就労で働くことはメリットばかりではありません。逆にデメリットとして挙げられることもあります。

◇ オープン就労のデメリット

  • クローズ就労(一般雇用)と比べると賃金が低くなる傾向がある
  • 裁量のある仕事や自分が希望する仕事などの機会が限られてしまう
  • 役職などを任せられる機会が限られてしまう
  • そもそも、募集が出ている求人の幅が狭く、限られた仕事しか選べない
などがあります。クローズ就労と比較して周りからの配慮などはしてもらえますが、一方で自分がやりたい仕事や会社を動かしていくような大きな裁量のある仕事などを任せてもらえない傾向があります。できることにある程度の制限が出てきてしまう雇用形態では、企業もどんな仕事を任せればいいのか迷ってしまうという本音もあるようです。また、役職なども一般雇用で採用されている人の方が任命されやすく、その分、昇格や昇給などにも機械に差が出てきてしまいます。

◇ クローズ就労のメリット

  • オープン就労(一般雇用)と比べると賃金が高くなる
  • 裁量のある仕事や自分が希望する仕事などの機会が得やすくなる
  • 役職などを任せられる機会も得やすくなる
  • 様々な求人が出ており、仕事の選択肢が広い
オープン就労のデメリットをそのまま裏返したようなものです。やはりオープン就労と比較した際のメリットとしては自由度が高いことや昇進・昇格の機会が多いことでしょうか。しかしながら、昇進や昇格をするということはそれだけ自分にかかる責任や仕事の量も大きくなるというもの。賃金の上昇に伴い自分がやることも増えるため、そこにプレッシャーを感じる人も多くいるようです。
その点、クローズ就労は条件面は数字だけでみるとオープン就労より魅力的に見えますが、実際には業務量の過多や重圧に耐えきれなくなってしまう人もいる事実があります。

◇ クローズ就労のデメリット

  • 障害や疾患について理解を得づらい、得られない
  • 合理的配慮のようなものは全く得られない
  • 外部機関などのサポートには頼れず、自分で全て調整していく必要がある
  • 通院や体調など、仕方がない理由を理解してもらいづらい
クローズ就労を考えた場合、デメリットは以上のように自分で全てを解決していかなければならないところです。体調を崩してしまった際には休みが必要になることもあると思いますが、クローズ就労の場合はそれが難しい一面があります。
場合によっては体調不良が多いことを理由に給料の条件などを下げられてしまったり、昇進をする際の足かせになる場合もあります。健康に就労を継続していければ良いですが、障害と付き合いながらの就労では難しい一面もあるでしょう。
 

オープン就労で働く方の体験談

ここからは実際に働く方の体験談をご紹介します。まずはオープン就労で働く方の体験談です。

◇ 公務員のAさん(障害:発達障害、自閉症スペクトラム)

3年ほど継続して公務員としてオープン就労で働いています。もともとは様々な職業を数ヶ月ほどで転々としていたAさんですが、現在の就職先では安定して3年ほど働くことができています。
ご自身が就労を継続している中でポイントだと述べられているのが『職業との適性』でした。元々パソコン作業などは得意だったAさんでしたが、これまでそのような仕事を任されることが少なかったようです。公務員として働くこととなり、周りも障害を理解した上での配慮をしてくれることにより、Aさんにあった適職で仕事ができるように配慮を進めていってもらったとのことです。時には体調を崩してしまうことや、周りとの人間関係に悩むことがありながらも、理解を示してくれる人がいることや自分が向いていると思う仕事をできることで今の環境でお仕事を継続しているとのことです。
 

クローズ就労で働く方の体験談

続いてクローズ就労で働く方の体験談です。

◇ SEとして働くNさん(障害:発達障害、ADHD)

5年ほどIT系のSEとして継続勤務をしているNさん。以前は異なる業界で営業として働いていましたが周りと全くうまくいかず、半年も経過せずに退職。その後、現在の業界のSEとして就職し5年ほど継続勤務しています。
こちらのNさんが就業を継続するポイントで言っていたのが『業界や仕事との相性』でした。営業で働いていた時には体育会系の業界で働いており、パワハラやモラハラは当たり前の業界でした。指示や指導にも全く一貫性がなく、論理性という言葉がほとんど通じないような状態。営業の数字さえ出ていれば良い、そうでない場合は全て間違い、というような体育会系の業界で勤務をされていました。しかしながら、ADHDの衝動性や発想力が豊かな点はそのような会社や業界ではターゲットにされてしまいます。人と多少異なることをすれば目立つので、その分周りから指摘も受けやすくなっていました。結果として彼はこの業界から退職し、IT系のSEとして転職をします。IT系のSEでは同じような価値観を持った人と仕事をすることもあり、自分がそこまで悪目立ちすることがなかったと言います。良い意味で自分と馬が合う業界を見つけられたとのことでした。
 

オープン就労/クローズ就労で働くための条件

オープン就労・クローズ就労で働くための条件は難しいことはありません。クローズ就労であれば一般的な求人や求人サイトから応募することで就活がスタートできます。オープン就労であれば障害者手帳を取得し、障害者雇用を募っている求人に応募すればOKです。しかしながら、大切なのは自分の特性や働き方の希望に合わせてどちらを選ぶかが一番大切なことです。
 

オープン就労/クローズ就労どちらが向いているか

では、オープン就労とクローズ就労のどちらが向いているのか。こちらは私がこれまでに様々な方と接してきた中で感じたことを中心に書かせてもらいます。

◇ オープン就労が向いている人

  • 障害が原因で業務に支障が出る恐れが高い(これが一番のポイントです!)
  • 病院の先生などからクローズ就労を止められている
  • 体調不良によって急に休む可能性などがある
  • 職場で人間関係を作っていくのが苦手
  • 気軽に悩みなどを相談できる友人や家族がいない
  • ストレス発散方法がわからない

◇ クローズ就労が向いている人

  • 障害があっても業務に支障が出る恐れが低い(やはりこれが一番のポイントです!)
  • 病院の先生などに相談してもあまり止められない
  • 体調不良などがあまりなく、ある程度コントロールできる
  • 職場で人間関係を作っていくことをあまり苦に感じない
  • 気軽に悩みなどを相談できる身近な人がいる
  • 趣味などストレス発散の方法をわかっている
対極的な形になりましたが、上記それぞれがオープン・クローズ就労に向いている傾向だと思います。いくつかの項目を挙げましたが、やはり一番大切なのは障害が原因で業務に支障が出るか、出ないか。正直なところ、業務にあまり支障が出なければ、障害の有無で周りから変な目で見られることや何かトラブルが起こることはそれほどありません。
しかしながら、業務に支障が出てしまうと話は別になってしまうので、この点に一番気をつけながらどちらの雇用方法を選ぶか決めていきましょう。
 

家でも就活オンラインとは

「家でも就活オンライン」は、全国の障害学生1000名以上が活用する障害学生のための就活・就職・求人サイトです。障害者雇用に関する就活のイベントや、お役立ち情報の発信、個別相談や求人紹介などを行っています。学生の皆様は無料でお使いいただけます。
<こんな学生におすすめ>
・障害学生の就活の情報が少なく困っている
・一人で頑張っているけど、自分のやり方でいいのか不安
・就活に向けて何から始めたらいいかわからない
・自分に合った企業や仕事がわからない

◇ 家でも就活オンラインでできること

◼ 内定者、先輩社員、人事担当に会える/障害者雇用を知る『就活イベント』

オンライン就活イベントを開催。障害者雇用では必ず知っておきたい情報の提供、イベントや疑似インターン企画、内定者、先輩社員、企業の人事担当との交流イベントなど、障害学生の皆様の就活に役立つ様々な機会をご提供します。

◼ 障害者雇用を知る『就活お役立ち情報』

障害者雇用の生の情報や、先輩の就活体験談を動画化。手軽に必要な情報が手に入ります。
また、障害者雇用の仕事を体感したい方向けに、オンラインで障害者雇用の仕事を疑似体験できるコンテンツもご用意しています。障害者雇用を知って、就活を有利に進めましょう。

◼ 求人に応募する『個別相談&求人紹介』

新卒障害学生を積極的に採用している企業のオンライン説明会を開催し、求人紹介を行っています。
説明会では、企業がどのような思いやビジョンで障害者雇用に取り組んでいるかをじっくり知ることができます。また求人紹介では、あなたに合った企業を一緒に考えます。
 

家でも就活オンラインを利用して就職された先輩の就活体験談

家でも就活オンラインを利用し、障害者雇用で就職された3名の先輩の就活体験談をお聞きしました。

◼ ご協力いただいた先輩


◇就職先・職種:製薬メーカー・人事職
◇学歴/障害種別:文系 23年卒/先天性心疾患

◇就職先・職種:サービス・デザイナー職
◇学歴/障害種別:芸術系 22年卒/ADHD・自閉スペクトラム症

◇就職先・職種:建設業・機電職
◇学歴/障害種別:理系 21年卒/自閉スペクトラム症・ADHD

◼ インタビューの内容

Q:面接ではどんなことを聞かれましたか?
Q:どのように就職活動をしましたか?
Q:就活でうまくいったこと、取り組んでよかったと思うこと
Q:就活の反省点、今だったらこうする!と思うこと
Q:今の会社を選んだ理由を教えてください
Q:会社のサポート体制を教えてください
Q:これから就活をする方へメッセージをお願いします!
 
 
🖊 この記事を書いた人・監修
記事を書いた人
銀河
上智大学卒。ASD(自閉症スペクトラム障害)とADHD(注意欠陥多動性障害)の当事者。ASD優位で空気を読むことが大の苦手。新卒で営業としてキャリアをスタートするも、約1年でうつ病を発症。復職し、発達障害であることの強みを活かして営業成績2位をおさめる。入社満3年を迎えるとともに退社し、会社の同期が設立したCare Earth(株)に誘われ参画。現在はCare Earthの仕事と同時並行しライターやプログラミング、コミュニティ運営を行う。
 
<著書>