ー 最新統計 × 先輩の反省点からわかる「今すぐ始めるべき理由」ー
はじめに(この記事の要約)
1.障害者雇用は拡大中で、就職環境は改善傾向
- 障害のある学生の数と就職者数は年々増加している。特に精神障害者の雇用が大きく伸びており、企業の受け入れ体制も強化されている。ただし、法定雇用率を達成している企業はまだ半数未満で、情報収集と早期準備が重要である。
2.障害のある学生の就活は3つの進め方がある
- 一般雇用のみ:選択肢が広く、就活時期は早めだが、障害に対する配慮が少ない可能性がある。
- 一般雇用と障害者雇用の併用:選択肢を広げ、自分に合った職場を見つけやすいが、応募管理が煩雑になる可能性がある。
- 障害者雇用のみ:障害配慮や就活サポートを受けやすいが、障害説明の準備が必要である。
3.早期準備と自己分析が成功の鍵
内定獲得者の声として、「準備不足を反省している」「情報に積極的に触れること」があり、自己分析・情報収集・選考前の準備、企業との接点を持つことが重要なステップである。
本記事では、障害のある学生の就活パターンを3つに分け、それぞれの特徴を解説します。さらに、どの進め方がおすすめかもご紹介します。

障害者雇用は着実に拡大中
厚生労働省の2023年(令和6年)の調査によれば、常用労働者数が40人以上の民間企業における障害者の雇用者数は677,461.5人と、前年より35,283.5人(5.5%増)となり、21年連続で過去最高を更新しました。
特に注目すべきは精神障害者の雇用者数で、前年比15.7%増と大幅な伸びを見せています。雇用者全体の内訳は以下の通りです。
- 身体障害者:368,949人(+2.4%)
- 知的障害者:157,795.5人(+4.0%)
- 精神障害者:150,717人(+15.7%)
実雇用率は、2.41%と13年連続で過去最高ですが、法定雇用率2.5%を達成している企業の割合は46.0%と半数未満です。
このように、障害者の雇用の場は確実に広がりつつあるものの、どのように就職先を見つけていけばいいのかわからない人も多いのではないでしょうか。障害のある学生が就職先を選ぶためには、自分に合った就活の進め方を見極め、早期から情報を収集しておくことが重要だと考えます。
障害のある学生の就活の現状
まず、障害のある学生の就職状況を見てみましょう。
障害のある学生の増加
近年、障害のある学生の数は増加傾向にあります。日本学生支援機構(JASSO)の2023年度(令和5年度)の調査によると、大学・短期大学・高等専門学校に在籍する障害のある学生は58,141人で、前年度の49,672人から8,469人(約17%増)の増加となりました。障害のある学生の在籍率は、1.79%と直近5年間で過去最高となっています。特に、精神障害(18,943人)、病弱・虚弱(15,181人)、発達障害(11,706人)の学生が多い傾向があります。
障害のある学生の増加は、教育機関における受け入れ体制の充実や、障害のある学生支援への社会的関心の高まりを反映していると考えられます。
就職者数の増加
企業側もダイバーシティやインクルージョンの観点から、障害のある人材の採用や定着支援に積極的な姿勢を見せるようになってきました。大学・短期大学・高等専門学校を卒業した障害のある学生の進路のうち、就職者は、2021年度2,973人、2022年度3,834人、2023年度4,702人と、年々、増加しています。
これらのデータから、障害のある学生の就活は着実に進展していることがわかります。一方で、進め方には個人差があり、どの方法が自分に合っているかを見極めることが何より重要です。
次に、障害のある学生の就活パターンを3つに分けてご紹介します。
就活の進め方3パターン
障害のある学生の就活の進め方は、大きく分けて以下3つのパターンがあります。
就活を始める段階で、どのパターンで進めるかを明確に決める必要はありません。しかし、どのような進め方があるのかを、まず知っておくことが重要です。
1. 一般雇用のみの就活をする
一般雇用とは、障害者雇用ではない新卒採用の求人に応募する方法です。
特徴
- 職種の選択肢が広い:職種の選択肢が広い:国内外問わず転勤ありの職種など、障害者雇用に比べて、応募できる職種の幅が広がります。
- 就活が早く終わる:就活が早く終わる:障害者雇用に比べて、募集期間が短い企業が多いので、例年4月頃には募集を終了している企業が多いです。
- 障害の開示方法を考える:障害の開示方法を考える:選考中に、障害を開示するかどうかの判断が求められます。障害者雇用ではないので、企業から障害について質問をする機会はまずありませんので、自分からいつどのように企業へ伝えるかを考えて、準備をする必要があります。
- 配慮が少ない可能性がある:配慮が少ない可能性がある:自分自身で障害を説明する必要があるため、選考時や入社後の配属先において、周囲のサポートを得にくい状況となり、働きづらさを感じることがあります。
2. 一般雇用と障害者雇用を並行して就活する
一般雇用と障害者雇用の両方に応募する方法です。
特徴
- 選択肢が広がる:両方に応募することで、選択肢が広がります。
- 自分に合った職場を見つけやすい:複数の選択肢から、自分に合った職場を見つけやすくなります。
- 応募先の管理が大変:選考が本格化する3月~5月の時期は、複数の応募先を管理する必要があり、面接の日程調整など、手間がかかる場合があります。
- 学内の支援窓口が複数になる可能性がある:一般雇用の就活支援をする職員と、障害者雇用の就活支援する職員がそれぞれいる場合が多く、一度に相談することが難しいことがあります。
3. 障害者雇用のみの就活をする
障害者雇用枠の求人にのみ応募する方法です。
特徴
- 障害に対する配慮が期待できる:障害者雇用枠では、応募の時点で障害を開示するため、選考時から配慮を受けて就活を進めることができます。
- 入社後のサポートが充実している:選考時に、自分の障害について説明をするだけでなく、企業側の配慮体制も知ることができるため、入社後のサポートが得やすいでしょう。
- 障害理解を深める必要がある障害特性や働くために必要な配慮事項を説明することが求められます。
- 契約社員スタートの募集もある:障害特性からフルタイム勤務が難しい場合や、まずは限定的な業務を希望する場合など、ステップを踏みながら働き始めることも可能です。
おすすめの進め方は「一般雇用と障害者雇用を並行して就活する」か「障害者雇用のみの就活をする」
まずは、自分はどのような働き方をしたいのかを考えましょう。
上記の3つの進め方の中で、おすすめは「一般雇用と障害者雇用を並行して就活する」か「障害者雇用のみの就活をする」です。
- 選択肢が広がる:一般雇用と障害者雇用の両方に応募することで、選択肢が広がり、自分に合った職場を見つけやすくなります。
- 業界理解・自己分析を深めることができる:一般雇用と障害者雇用のどちらの就活を進めるにしても、両方の就活情報に触れておくことで、どのような業界があるのか、どのような企業があるのかを知る機会が増えます。そして、実際に就活イベントに参加することで、気づきを得て、自己分析を深めていくこともできるでしょう。
- 障害の配慮を受けやすい:障害者雇用の場合は、応募の段階から障害のことを伝えますので、選考時から配慮を受けやすいですし、入社後のサポート体制も整っている場合が多いです。
<注意点>
「3.障害者雇用のみの就活をする」場合でも、一般雇用の就活スケジュールと同じように、早めに動き出しましょう。並行して進めるのは大変そうだから、まずは一般雇用の就活をして、その後に障害者雇用の就活をしようと考える人もいるでしょう。しかし、一般雇用枠と障害者雇用枠を同時期に募集する企業は少なくありません。例年、「一般雇用の就活後に、障害者雇用の就活を始めようと思っていたら、受けたい企業の応募受付がすでに終了していた…」と気づく学生がいます。一般雇用・障害者雇用に限らず、早めに就活情報に触れておくことをおすすめします。
一般雇用のみの就活は、自ら積極的に情報を収集して行動し、どんどん挑戦していきたい人に向いています。一般雇用のみの就活を選択する場合でも、まずは障害者雇用の就活情報を得ることで、職場での合理的配慮の事例や、選考時の配慮事項の伝え方を知ることができますので、一般雇用の就活にも役に立つでしょう。
就活を進めるためのステップ
就活を進めるためには、以下のステップを踏むことが重要です。
- 自己分析を行う:自分の強み・弱み、興味のある業界や職種、求める配慮事項などを書き出しましょう。
- 情報収集をする:大学のキャリアセンター、障害学生支援室、求人サイトなどを活用し、企業情報を収集し、興味のある就職先を選びましょう。
- 書類を準備する:履歴書やエントリーシートに、自分の経験や強み、アピールできることを書けるようにしましょう。また、障害特性や配慮事項も説明できるように準備しましょう。
- 面接対策をする:面接で自分のことを伝えられるように練習しましょう。特に、一般雇用の就活を進める場合は、障害について、どのタイミングで、どのように伝えるのか準備をしましょう。
- 企業との接点を持つ:積極的にインターンや企業説明会に参加し、応募したい企業を見つけて、エントリーしましょう。
障害のある先輩に聞いた就活の反省点
- もっと準備をすればよかった!
就職活動について常に受け身で自分から調べたり人に聞いたりすることがなかったので、とにかくまず相談室などに聞きに行くべきだったと思う。また、就職活動を始めたときにエントリーシートや面接に使う自己分析も全く足りていなかったので、自己分析を進めて自分がしたいこと、得意なことを理解した上で選考を進めるべきだったと思う。とにかく準備をするべきだった。 - 尻込みせずにもっと参加すればよかった!
実質1社しか面接を受けられていなかったので、もっと広く障害者雇用の企業説明会に参加すればよかったです。障害者雇用の求人でもSPIがあったり、配属部門先が曖昧であったりで尻込みをしていました。ただでさえ障害学生が得られる情報が少ない中で、参加しなかったのはもったいないことをしました。 - 障害者雇用ならではの面接対策をしておけばよかった!
健常者と同じ面接質問+配慮事項に加えて、自分の将来像や客観的な考えを引き出す質問が多かった印象があります。会社の将来性については対策していましたが、自分自身の対策をしていなかったので大変焦りました。今ならば、一般的な面接対策と障害者雇用ならではの面接対策を行うと思います。
先輩たちの就活体験談からもわかるように、早めに情報収集をして、積極的に企業と接点を持ちながら、自分自身のことを伝えられるように準備することが重要と言えるでしょう。
障害者雇用担当者の声
障害者雇用就活で特に大切なこと
私が思うに「障害」は会社にとって迷惑なことではありません。
多様な人が入ってくればそれだけ会社も成長できるので、障害を誇っていただいてもいいくらいだと考えています。
多様な人が入ってくればそれだけ会社も成長できるので、障害を誇っていただいてもいいくらいだと考えています。
配慮してほしいことは、むしろ話していただいたほうが会社としても安心できますので、後ろめたい気持ちをもつ必要は全くありません。(むしろ遠慮されてしまうほうが、入社後フォローできなかったらどうしよう…と心配になります)
また、入社後何か困ったことがあったときに相談できる人間関係を築けそうな職場かどうかも併せて確認してください。
困ったときに「助けて」と自分から言わなければならないのはどの会社も同じですので、それができる職場こそが「働きやすい会社」だと思います。
障害のある学生向けの情報をキャッチするために
就職活動を進める上で、障害のある学生向けの情報をキャッチすることは非常に重要です。
家でも就活オンラインでは、求人情報だけでなく、インターンシップ、合同企業説明会、就活対策セミナーなど、就活に欠かせないお役立ち情報を多数掲載しています。
早めに登録して、情報収集を始めましょう!
就職活動は、自分の未来を切り開く大切なステップです。障害者雇用は進んでいますが、すべての企業が自分に合っているとは限りません。だからこそ、積極的に情報収集をして、自分に合った方法で取り組んでいきましょう。
監修者プロフィール
遠藤 侑(えんどう・ゆう)
株式会社エンカレッジ 大学支援事業部 リーダー/訪問型ジョブコーチ