聴覚障害のある人事担当者が語る!障害者雇用の就活・働き方の秘訣

 
家でも就活オンラインでは、障害学生の就活に役立つイベントを開催しております。
本記事は2023/1/10~2/21開催の「24年卒障害学生 働き方新春フェス」のうち、『就活のイメージをつけよう!~障害のある先輩直伝!就職活動・働き方セミナー~』からのイベントレポートです。
大手メーカーに勤める聴覚障害のある人事担当者が、自身の就活経験や人事担当者だから言える、障害者雇用就活・働き方の大切な心構えや秘訣などをトークセッション形式でお伝えしました。
障害者雇用での就職を目指す方に必見のレポートです。人事担当者のリアルな考えを知り、就活のヒントとして役立てましょう。

◆ 人事・採用担当としての働き方について

 

仕事内容・職場の方とのコミュニケーションの取り方

私が働いている会社は在宅勤務も選択できますので、全社員がチャットツールを使ってコミュニケーションをとる文化があります。
そのため、基本的にチャットを使ってコミュニケーションをとっています。(※出社時もほぼ同じ方法)
会議はオンラインが中心なので字幕機能をつけていただいています。
 

この仕事に就こうと思った理由

この会社を選んだ理由は、好きな業界だからです。
採用人事を希望した理由は、学生時代から障害をもつ人々が選べる仕事の幅を広げる活動をしたいと思っていました。
そのため会社の中でこの志を実現できるポジションとして採用人事を希望しました。
 

仕事で大変なこと

「採用目標人数」と「会社が求める人材の獲得」の両方を同時に追いかけなければならないことがとても難しいです。
入社していただいたからには楽しく働いてほしいので、誰でも採用できるわけではありません。
学生と会社の希望をどちらも叶えることができるかどうかをしっかり検討し、採用するかどうか判断をしていますので、採用に至る人数が目標になかなか届かないことが大変だと感じます。
 

仕事のやりがい

内定式、入社式で自分が採用した方の晴れの姿を見る瞬間が嬉しいです。
会社側の人間ですが、できる限り「候補者の味方でいたい」と思っています。
選考を受けてくださっている方が悔いのない道を選べるよう、ひとりの人間として寄り添って一緒に考えるように心がけています。
関わった方が、自分の将来にわくわくしている様子を見れるのが採用担当のやりがいです。

◆ 人事・採用担当として考えていること

 

23卒学生の印象

23卒の学生さんは22卒と比べると、大学2~3年生の間に外出できる機会が増えたかと思います。
アルバイトも複数掛け持ちしたり、ゼミ活動も対面でできたりと、一昨年や昨年と比べると生活が充実している方が多いように感じます。
面接でも学生時代の思い出や失敗談を聞ける機会が増えて、嬉しく思います。
その一方で、留学に行けなかったなど、まだまだコロナの影響が残っているなと感じることもありますので、そういう制約とうまく付き合いながら、自分が楽しめる方法を模索できる方が増えているなという印象です。
 

新卒採用担当者から見る就活生の大切な心構えやスタンス

会社が見ているのは下記3点です。
1)あなたの今までの経験(過去)
どのような行動を起こす人なのか?
2)あなた自身がもつ想い(現在)
行動するときの原動力になるものは何か?
3)今後どんなことに挑戦したいか(未来)
入社後どのような形で活躍してくれるか?
また「あなたがこの会社に入って幸せになれるか?」も重視しています。
数十年先のなりたい自分像を思い描いて、そこから逆算して業界や職種を絞り込むと、筋が通った話ができるようになると思います。
自分の想いに妥協しないこと。自分に自信を持ってください。
 

障害者雇用就活で特に大切なこと

私が思うに「障害」は会社にとって迷惑なことではありません。
多様な人が入ってくればそれだけ会社も成長できるので、障害を誇っていただいてもいいくらいだと考えています。
配慮してほしいことは、むしろ話していただいたほうが会社としても安心できますので、後ろめたい気持ちをもつ必要は全くありません。(むしろ遠慮されてしまうほうが、入社後フォローできなかったらどうしよう…と心配になります)
また、入社後何か困ったことがあったときに相談できる人間関係を築けそうな職場かどうかも併せて確認してください。
困ったときに「助けて」と自分から言わなければならないのはどの会社も同じですので、それができる職場こそが「働きやすい会社」だと思います。
 

ESの強みを書けない学生も多いが、強みはどのように見つけるべきか

「他人と比べたときの」自分の強みを書いてほしいわけではなく、あなた自身が「できている」と思うことでOKです。
私の場合は、「試行錯誤しながら形にすること」が得意だと書きました。
完成度の高いものを作ることは苦手ですが、フットワーク軽く少し試してすぐに確認してもらい…を繰り返すうちにある程度の形をスピーディに作ることが得意だと自分で感じています。
自分が苦手だと感じることに対して、「でもこういうことなら出来るかも」と思えるものを書いていただいても十分立派な強みになると思います。
 

コロナ禍でガクチカを書けない学生に採用担当者からアドバイスがあれば

最近はコロナ禍でイベントもなくなり、アルバイトも減り、留学もできなくなり、かなりガクチカ(学生時代に力を入れたこと)を書くのが難しくなってきています。
ですがそれはどの学生も同じですし、採用担当もわかっているので安心してください。輝かしいガクチカでなくてもいいんです!
例えば過去に「Twitterでフォロワーを増やすこと」と答えた学生がいましたが、これも立派なガクチカだと思います。
一番重要なのは、そのガクチカの“原動力”が何かを語れるかどうかです。
また、この原動力を入社後も持てます!と話すことができれば、ガクチカとしてはパーフェクトだと思います。(個人的見解です)
 

書類選考を通過する学生のESの共通点

入社がゴールになってしまっているものは通過しにくい印象です。
(例:私の強みである●●を御社で活かしたい)
入社後数十年を見据えて、どんな自分になりたいかを思い描いて書かれた志望動機には深みが出ますし、もっと話を聞いてみたくなることも多いかなと思います。
(例:将来的には御社で●●に取り組み、社会に貢献したい)
 

一次・二次・最終面接で重視していること

(会社によりますが)大抵の場合、一次面接は会社の求めている人材に合致するかどうかの確認と、会社の雰囲気に合っているかどうかの見極めです。
それに対し、二次・三次面接などは配属先の検討や、実務の内容とその人の相性がいいかどうかを確かめることが多いかなと思います。
最終では役員(幹部)が面接することが多く、この場合は経営者目線で「この人は数年先、うちの会社でどう活躍してくれるのか」を見られていると思います。
今の自分をありのまま伝えつつ、入社後どんな自分になりたいかを明確にイメージして面接に臨むのがとても重要だと思います。
 

筆記試験対策ではどのようなところを見ている?配慮依頼は可能?

(会社によりますが)学力だけを見ているのではなく、あなたの特性も見ています。
何が得意で何が苦手かを知ることで、あなたの特性に合った仕事を割り振ることができます。
特に心理テストのような設問では、嘘をつかない方がいいと思います。
配慮依頼は基本的に可能だと思います。
どんな配慮かは会社によりますが、制限時間の延長などが多いように個人的には思います。
不安な方はぜひ希望する会社に相談してみてください。

◆ 長く働き続けるために大切なこと

 

長く働き続けるために職場で気を付けていることや大切にしていること

頑張りすぎないことです(笑)
前のめりになって一生懸命になることは悪いことではありませんが、人間は常に100%を発揮できないので、無理のない範囲でやりたいと思っています。
目標を設定するときも、想いのこもった大きな目標を立てつつも、今の自分が苦しくならない程度の目標を手前にいくつか立てて、達成感を味わいながら働けるように心がけています。
 

トラブルやストレスにはどのように対処している?

仕事だけを人生のすべてにしないことです。
前職では公私混同が多くて精神的に疲れてしまいましたが、現職では勤務時間以外は自分を甘やかしたり会いたい人に会ったりして、人生を楽しく過ごせています。
ある程度のメリハリがあったほうがストレス発散できますし、仕事に身も入るようになったと感じます。
 

就職活動をする障害学生へメッセージ

「あなただけが原因で不採用になることはない」ということだけは覚えておいてほしいです。
不採用になるのは、会社側の事情が大きいです。
例えば適性検査で落ちたとしても、それはあなたの点数が悪かったわけではなく、会社側が想定しているポジションにあなたの特性が合わなかっただけだったりします。
なかなか内定をもらえない方と会うと「とにかく内定が欲しい」一心で、自分の想いや将来のことを忘れてしまっていることが多いです。
そうなると、なおさら合格することが難しくなってしまいます。
一番大切なのは、あなたの想いや夢を大切にして“ワクワク”すること。
つらいこともあるかもしれませんが、その時には一週間ほどお休みしたりして焦らずに頑張ってください。
皆さんが、納得のいく形で就活を終えられますように!応援しています。
 

◆ 質疑応答

自分は大学で法律を勉強しているのですが、人事で働く上でこの資格を持っている人は長く生き残れると思う資格はありますか?
人事に使う資格よりも、その会社の業界に関する資格を取っていた方が会社全体のことを理解できて活躍しやすいかもしれません。
例えば、販売系の会社であれば、販売士の資格を持っていると人事でも活躍しやすいです。法務部など、専門的なことを扱う部署なら入社時に保有資格を確認されることもありますが、入社後に長く働くなら法律以外のことも勉強したほうがいいという感じです。
 
前職を選んだ理由を聞きたいです。
障害の就労問題を扱える会社に入りましたが、勤務地や色々妥協しすぎたため、会社のことを好きになれず退職しました。妥協はしすぎない方がいいかなと感じています。
 
就活で大変だったことは何ですか?その時どうしてましたか?
大変だったことは会社に合わせて何度も志望動機を書くこと。書いているうちに自分のやりたいことがわからなくなり大変でした。あらかじめ志望動機になる軸を1枚の紙にまとめておくと迷子になりにくくなります。
就活が辛くなった時は就活以外の道を書き出したりしました。沖縄に移住するとか。就職しなくてもこんなに選択肢があるんだと実感してから安心して1週間休んでから復活し、就活を続けられました。
 
就活と卒論はどのように両立していましたか?
たしかに両立は難しいです(笑)、私も苦労しました。学業にガッツリ専念するタイプではなかったので、ほどほどに力を抜いてやっていました。大学にいるときは学業、大学にいないときは就活に時間を使うようにメリハリをつけていました。卒論は図書館で書く、就活は家ですると場所で分けて取り組んでいました。
 
逆質問について、企業側としてはどんな質問を求めているのですか?
質問を必ずしなければならないということは全くないですが、しいていうなら心配事を自力で解消できるかどうかを見ていると思います。受け身ではなく、自分から心配事を言語化できるかどうか、心配事がないよとアピールするといいと思います。
 
聴覚障害の配慮をどのようにしたか?
面接の配慮はエントリーするときの備考欄に書く、なければメールで伝えていました。割と柔軟に対応してくれる企業が多かったです。
 
 
🖊 本記事のイベント登壇者
登壇者
藤田 菜々子
大手販売会社の人事担当者。(障害者採用担当3年目)
静岡県出身。ろう学校卒業後、愛知淑徳大学に進学しマーケティングを学ぶ。
新卒ではベンチャー企業で広告マーケティングを担当。
現在は大手メーカーで採用人事として勤めている。
主な業務内容は、障害者採用全般と、一般新卒採用の補助業務。
副業として役者活動をしており、出演作にはNHKドラマ『中学生日記』、映画『咲む』などがある。