コラム

【大学・支援機関向け】就活中に学生と一緒に振り返っておくべき3つのこと

1)振り返りはなぜ必要か?

支援者の方は、就職活動における振り返りの重要性についてはすでに十分認識されているかと思います。ここでは、それを学生にどう伝えたらいいか?という視点で考えてみたいと思います。

①次の選考へのパフォーマンスを上げるため
自分の行動で上手くいったところや改善すべきところを振り返り、次に向けた対策を考えることで、よりよい受け答えやコミュニケーションができるようになります。

②自己理解を深めるため
選考を通しての気づきや感じたことを振り返ることで、大事にしたい価値観や考え方、自分の適性などを見つめ直すことができます。就活では、自分に合った企業かどうかを見極めることも大切ですが、そのためにも自己理解を深める振り返りが有効です。

振り返りは、選考での内容を忘れてしまう前にできる限り早く(できれば3日以内に)行うことがおすすめです。また、振り返りの際には関連する資料(日誌、履歴書、エントリーシートなど)をなるべくたくさん持ってきてもらうことで、振り返りをしやすくなります。

2)何を振り返るのか?

次に、何について振り返ればいいのか、ということについて考えてみます。

振り返りの内容には、大きく分けて、
1)自己分析としての振り返り
2)選考当日の振り返り
3)選考プロセス全体の振り返り
の3つがあります。

2−1)自己分析としての振り返り

ここでは、選考で企業の方と話をする中で、学生本人が気づいたこと・感じたことをアウトプットしていきます。企業のこと、仕事のこと、自分自身のことなど、学生本人のWill(やりたいこと)−Can(できること)−Must(求められること)が明確になるようにサポートできるとよいでしょう。

質問例)
・どんな企業で働きたいと思いましたか?
・実際に話してみて印象が変わった企業はありましたか?どんな風に変わりましたか?
・面白そう、やりたい、と思う仕事はありましたか?どうしてそう思ったのですか?
・企業選びでは何を大事にしたいと思いましたか?
・企業からどんなことが求められていると思いましたか?どういったところが評価されると思いましたか?
・自分ができそうなことや活かせそうな強みは見つかりましたか?

こんなことに困ったら・・・
学生に質問しても「分かりません」と言われたり、自分の内面についての振り返りが苦手なのか、黙ってしまったりします。どうすれば本人の感じたことや考えたことをもっと引き出せるでしょうか?
対応策

1)事実を引き出す
自分の考えや感情については話せなくても、起こった出来事や事実であれば話せることもあります。
たとえば、面接の振り返りであれば、面接官に何を聞かれて自分がどう答えたのかを聞き出すことはできると思います。まずはその時の状況についてイメージを共有するところから始めることは有効です。

2)クローズドクエスチョンで質問する
どう思った?どうしてそう感じた?といったオープンクエスチョンには答えられなくても、イエスorノーもしくはA or Bの比較であれば答えられることもあります。
事実を引き出してイメージを共有した上で、たとえば、静かな職場と賑やかな職場、どちらの方が自分に合っていると思いましたか?といった質問の仕方をすることで、話を引き出してみましょう。

2−2)選考当日の振り返り

ここでは、選考当日の上手くいったこと、いかなかったことを振り返って、次の機会に向けた具体的な行動を決めていきます。振り返り方法にはKPT法を使うとよいでしょう。
KPTとは、3つの英単語の頭文字を取ったもので、
Keep:良かったこと(=続けること)
Problem:よくない結果につながってしまった行動(=やめること)
Try:次にやってみること
のことを指します。
ここでは、選考に受かった/落ちたという結果ではなく「行動」にフォーカスして振り返ることがポイントです。選考プロセス全体の振り返りをしてから考えてもよいでしょう。

質問例)
・第一印象を良くするためにどんなことを意識しましたか?
・自分自身の話を聴く姿勢を振り返ってみてどうですか?
・企業の方からはどんな質問をされましたか?また、それにどう答えましたか?
・上手く答えられたことと、反対に答えられなかったことは何でしたか?
・企業の方の反応はどのようでしたか?
・自分の伝えたいことはどれくらい伝えられましたか?また、そう思う理由はなんですか?

こんなことに困ったら・・・
学生が自分のできなかったことばかりに目を向けてしまい、ネガティブな発言や捉え方が目立ちます。どうすればもっと建設的な振り返りができるのでしょうか?
対応策

1)プロセスを可視化し、どこまではできているか明確にする
たとえば、面接で落ちてしまった場合、どうしてもその時起こった出来事だけを見てネガティブになってしまうかもしれません。ただ、面接を受けているということは、書類選考や筆記試験は通過しているなど、そこに至るまでのプロセスを可視化してみると、できていることもあるはずです。
就職活動で必要なプロセスを実際に紙に書き出してみて、今どこまでできているか?後はどんなプロセスをクリアできればいいのか?を目で見える形で共有することで、本人が今までやってきたことを改めて認識することにつながります。 

2)気持ちの切り替えができてから再度振り返る
どうしてもネガティブな感情でいっぱいになってしまっている場合は、いったんクールダウンする時間をとった方がよいこともあります。十分な休息を取る、自分の好きなことをするなどして、気持ちを切り替えてから後日改めて振り返りをするよう促すことも一つの手です。

こんなことに困ったら・・・
支援者から見るとできていないと思うことでも、本人はできていると思っている様子です。この認識の違いをどうフィードバックすればいいのでしょうか?
対応策

1)肯定的なフィードバック+Iメッセージで伝える
原則は、本人に寄り添うように、できていることを伝える肯定的なフィードバックが大切です。とはいえ、それだけでは本人が自分のできていないことに気づかない場合は、Iメッセージで伝える(私だったらこうするけど、どう思う?こういう視点もあると思うけど、どう思う?一般的にはこうかなと思うけど、どう思う?など)ことがよいでしょう。併せて、何か一つ指摘する前に肯定的なフィードバックを多めに伝えておくことも大切です。

2)まずは体験してみる
口頭でやりとりしているだけでは何がどうできていないのかを実感しにくいこともあると思います。その場合は、まず一度実際に体験してみて、「上手くいかなかった」という経験をした直後に振り返ることが大切です。また、たとえば面接練習であれば、模擬面接の様子をビデオ撮影して映像を見て振り返りをする、面接官役をやってもらい、選考する側の立場を体験してみることなども有効です。

2−3)選考プロセス全体の振り返り

ここでは、選考前後を含めたプロセス全体を見直す振り返りを行います。前述のKPTで言うと、Tryの部分はこの段階で決めてもいいと思います。
プロセスというと、
①準備段階(自己PR、志望動機、配慮事項などの準備、企業研究、面接対策など)
②選考当日段階
③マッチング段階
の3つに分けられます。特に、準備段階での良かったことや改善点について振り返りをするとよいでしょう。それを踏まえて、次回に向けてどんな準備ができそうか、具体的な次の行動とその期日を決めていきますが、準備を進める上で困りそうなことについても予め対策を検討しておけるとよりよいと思います。

質問例)
・事前準備でやってよかったこと、反対にこれはやっておけばよかったなと思うことは何ですか?
・プロフィール項目の中で書きにくかったところはありましたか?
・企業研究は十分にできましたか?さらにできそうなことはありますか?
・次の機会に向けて、どんな準備ができそうですか?
・準備を進める上で困りそうなことがあるとすればどんなことですか?

こんなことに困ったら・・・
学生に今後どうすればいいか?を聞いても具体的な行動や対策が出てきません。どうすれば自分で考えてもらえるのでしょうか?
対応策
1)考えるためのフレームや選択肢を提示する
そもそも具体的な行動がイメージするための材料を持っていない場合も多いため、考えるためのフレームを提示してあげることは有効です。
たとえば自己紹介で何を話したらよいかわからないという場合、「挨拶、名前、所属」+「伝えたい要素」+「締めの一言」という構成を提示し、そこに入れる具体的な内容は本人に考えてもらうなどです。
もしくは、いくつかの選択肢を提示した上でどうしたいかを本人に選ばせる形もよいでしょう。
3)活動記録の書き方と活用方法

振り返りの内容は、Boosterキャリアの「活動記録」で蓄積することができるようになっています。活動記録には以下の項目を入力できます。

種別 □面接 □グループディスカッション □筆記試験 □インターン・実習 □説明会 □その他 から一つ選択します。
日付 20XX/XX/XX 活動した日付を選択します。
内容 A社面接、B社インターン、○○マッチングイベントなど、何の活動についての記録なのかが分かるよう、具体的な活動名を入力します。
出来たこと KPTのK=良かったこと、続けることについて入力します。
課題 KPTのP=よくない結果につながってしまった行動、やめること、改善点について入力します。
今後の対応 KPTのT=次にやること、具体的な行動と期日について入力します。
添付ファイル 今回の活動で使用した資料などがあれば添付します。
コーチのコメント 学生が入力した振り返りを踏まえてフィードバックを入力します。

活動記録の活用方法としては、
①事前に学生に活動記録を書いてきてもらう。
②それを見ながら振り返り面談を行い、より内容を深める。
③振り返り面談を踏まえて学生に活動記録を加筆させる。
④加筆された活動記録について、コーチのコメント欄にフィードバックを入力する。
といった順番で使っていただくとより効果的です。学生本人だけでは活動記録を書けない場合は、振り返り面談で話した内容をメモしてもらい、それを後で入力してもらう形でもよいでしょう。
このように一つ一つのプロセスに対して振り返りと活動記録を蓄積していくことで、学生の自己理解を促すことができ、企業への応募書類を作成する際にも役立ちます。